* 裏本 五十歳、歯学部へ行く。( 体験記・医療系 ) * * *   < kujila-books ホームへ帰る >

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 人生に免疫力無き方、読む事なりまッせん

第 2 章 * 1 / 3
明海大歯学部エンドの不正力学
< 歯内療法学講座の不正力学 >



歯内療法学を英語で、エンドドンティックス
と申す。略してエンド。
よって以後、エンドと申す。

ワシ卒後、このエンドに残った。
29期のエンド、同期は二名。
ワシと、鉢ノ木勝則君のふたりである。

そしてワシ、不正なる力学をエンドに見、
鉢ノ木勝則君とトラブッた。

けしからん講座の印象が残る。



*     *     *




< 明海大学歯学部・歯内療法学講座の怪談。>



明海大学歯学部はエンドの講座には、お化けが出る。 それ当時
エンドの教授だった 西川博文先生に起因す。

長い長い年月を掛けて形成の、一種のゆがみである。 だから
容易な事では解消せん。



しかしこのお化けも、張本人たる高見英行なる先生が自覚して席を
降りれば、その瞬間に解決す。

高見英行先生、しかしながら折角手にした、その美味(びみ)なる
権力を、なかなかには手放さぬ。



よってワシ、この一文にて、高見先生に注意を喚起し、出来得れば
席を降りて頂きたいと勧告する次第である。

ワシに権限が有れば、即刻、高見英行なる先生を追放する。 大学へ
出入り差し止める。



さて門外者には判り難いと思うので、以下、順に申し上げる。



***************************************************************



< 西川博文教授と高見英行先生の歴史。>



これは西川博文教授から直接聞いた話である。 何処まで客観的に
正しいか、保証はせぬが、

それよりの見聞に照らして、さしたる改正を必要としないから、まあ
こんなものだろうと思い、書くのである。



西川博文教授、大阪歯科大学卒業。 つまり ダイシ だ。 大歯と
書く。

先生はそこのエンド(歯内療法学)の大学院を出られた。 西川先生
実家は銀座のド真ん中。 資生堂ビルの向かいだぜ。



母親がモデルの斡旋業だったので、オギャア〜と生まれた時より、
美女に囲まれて、お育ち。

実父が商売物の若い女に手を付けて、追放され。 ワシの見たお父さ
ん、ちゅうのは、後妻ならぬ後父(ごふ)でした。



この後夫さん、なかなかに出来た方でした。 でなきゃあ、前夫同様
三行半(みくだりはん)だったでしょ。

西川教授、お父さんお父さん言うて、なついて居られました。



教授、大歯の大学院出たら、すぐさま実家の銀座のド真ん中にて、
西川歯科医院を開く積りだったのに、

大歯の担当教授に呼ばれて、お前、城西歯科大のエンドへ行って
呉れ。 城西歯科大ちゅうのは、

明海大歯学部の前身ザマス。



西川センセ、そんなんイヤヤ。 わしは銀座で開業しますんや。
言うとるのに教授、

お前アホやなあ、銀座と坂戸の城西歯科大言うたら、目と鼻の先や
ないか。 二〜三年大学にて奉公して、それから

開業すれば良いやろに。 そんな事も判らんのか言われて、



なるほどと思たのが運の尽き。 明海大歯(は)にて、一生を終わる
事とは成りにけるかも。

なにしろ当時の城西歯科大の埼玉県坂戸市けやき台、ちゅうたら、
文字通り狸(たぬき)のうろつく、山の中だったのだ。



東部東上線は池袋発なれど、川越を越して坂戸に着くと、支線と称し
て、越生(おごせ)線が出とる。

これに乗り換えるのが(ワシの)苦痛でナ。 我慢して乗り換えて
駅をみっつほど行くと、川角(かわかど)なる、

ケチな駅に着く。



そっから歩く事十五分だ。 上り坂だから足弱には難儀。 やっと
の事でたどり着けるのが、我らの明海大学歯学部だ。

以下、邪魔臭いから城西歯科大を止め、明海大で統一す。



   *       *       *



こんな山ん中へ、ひょっこり建てた新設歯学部。 当時を聞けば
爆笑ものの馬鹿話、ぞろぞろと出る。

西川博文教授の行った頃は大学の建物がまだ完成して居らず、教授陣
も建物も、これからって感じだから、



西川センセ、たちまち助手から講師へ昇格。 助教授に成ったかと
思うより早く、教授に成ってしまったのだが、

これには裏話が有ってノ。 前任教授、家族が大阪に居るのだぞ。
そんなのが学事課の事務のおなごに手を付けやがってよ。



女は真剣、当然結婚の積り。 教授には家庭が有る。 たちまち
破綻だ。

で、その教授、切羽詰りて夜逃げした。 すると講座に教授が居なく
成る。 おいッ西川セン、今日から君、教授して呉れと

言われたそうナ。



西川博文教授、まだ四十歳前だぜ。 新設歯科大なればこその、
笑い話ではある。

アメリカ西部開拓時代だったのさ。



   *       *       *



センセ、その頃、既に結婚。 これが十歳年上の(有名な)モデル
でナ。 ごっつい美人だったそうだが、

こんな田舎には私住めない言うて。 神戸の高級住宅街へ、帰って
しまって、センセ、一人住まい。



奥様、某有名女性月刊誌の表紙の常連。 スタイル抜群なれど、
素顔を真近に見ると、さしたる美人でも無かったと、

ワシに言うた先生が居ったが、ワシ自身の眼では見ておらぬから、
美人だったとも、なかったとも、

確言し難し。



   *       *       *



教授してた頃、高見英行なる、なかなかにユニークな経歴の学生が
入学して来た。

この高見セン、誠にユニークな方で、米国はカリフォルニア州の大学
の、コンピューター学科を卒業しとる。



在学中、英語力を見込まれて、留学の日本人学生に英語を教えてた。
生徒に歯学生が多かった。 そいつらは、

いわゆる大学院留学である。 そんなのを教えてる内に歯科学なる
ものに興味を抱いて、よし、わしも一丁、



コンピューターなんかより、歯科医師に成ったろかと考えて、
あちらの大学の歯学部へ入学。

英語ペラペラの筈なのに、解剖学で躓(つまずい)た。 ラテン語が
混じって、サッパ判らんかったそうである。



遂に観念して帰国、日本の、我が明海大歯学部へ御座ったと言う
わけサ。

英語ペラペラの上、コンピューターの専門家だったので、色んな講座
から引く手あまただったらしい。



それが何の縁か、西川博文教授のエンド(歯内療法)にて、ワラジを
脱いだ。

教授いわく、彼、学生時代からボクの運転手なんかして呉れて、当時
のボクは良く講演に呼ばれたから、



その運転手だよ。 在学中から、そんな仲だったんで、卒業するや、
直ぐエンドで助手に採用した。

あのまま居りゃあ、当然彼は、ボクの次の教授さ。 だけど途中で
進路変更して開業した。 お金の問題が有ってな。



   *       *       *



さて、ここまでは良し。 問題は西川博文教授の健康である。 教授
四十歳前後にて、心臓病。

これの治療、本学付属病院の内科の医師に頼んでたら、良い薬が
出た、これ飲め言われて、



真面目に飲んでたら腎臓に来てしまった。 腎不全にて透析よ。
ボクにその薬、処方したセンセ、

ボクが透析に成ったら、大学をトンズラした。 どうやらあの薬、
どっかの製薬会社の臨床試験の薬だったらし。



ボク、実験台さ。 お陰で人生、滅茶苦茶だ。 腎臓してたら今度は
糖尿だろ。 二重苦、三重苦だ。

女房は神戸へ帰っちゃうし。 透析は週二回だし。 さすがのボクも
慣れるまで苦しかった。



そこから自然と教授の権力の一部、高見英行先生の手に移るの当然
かも。 ワシらがエンドに入局した頃、

西川教授に権限の80%、高見先生に移行してた如く見えた。
それも教授の生きてる内は目立たない。



西川教授が心臓にて急死されると、その矛盾が露(あらわ)に
成った。

学外の開業歯科医が、実質、明海大歯学部エンドの教授である。
教授の急死後、一度、中村幸生なる、確か日本歯科大から、

だったように思うが、



その先生が、教授に就任したのである。 だのに2年で出て行った。
正確な理由は知らないよ。

推測ながら、請われて教授に就任された中村センセ。 エンドの真の
教授は、学外の、高見英行なる開業歯科医である事に、

ぶち当たったのだと思う。



そこで名は教授なれど、実質の教授たる高見英行センセに席を譲り、
二番手の教授なりを納得すれば勤まったかも知れぬが、

これは何事だ、など思っては追い出さる。 ワシ、そんな見方にて
中村教授は出られたのではないかと推測しとる。

文句有る方、申し出られよ。



   *       *       *



まだ西川博文教授が存命中だった。 つまりワシらの入局した、その
年だよ。 かねてより西川教授の後釜を誰にするかの選考が、

されて居たのだ。 これ鉢ノ木勝則君からの情報なれど、くだんの
エンドの真の教授たる高見英行センセ、



昼メシの後は長椅子へ、デレ〜ッと寝そべって、教授選考のリストを
手にしつつ、

誰を教授にしようかなあああ〜、など、つぶやいて居ったそうナ。
教授メーカーの気分だな。



それで無くとも、コワモテ高見、埼玉県歯科医師会では三番手、
大物高見英行だ。

その頃、白羽の矢を立てられたのは、日大歯学部エンドの小森規男
先生である。



この先生、かねてより我が明海大歯学部エンドに出入りなされて居た。
いわば二重丸の、次期教授候補だったのだ。

これはまあ、順当な選考と言える。



恐らく西川教授と高見英行センセから、次は君の番だ、てな事を
言われたんでしょ。

お顔を猛烈に上気され、ワシら新米のセンセに、やあ君たち、おは
ようなんて、普段言わない挨拶、されてたよ。

よっぽど嬉しかったのだと思う。



   *       *       *



我ら顔見合わせて、センセ、どうやら次の教授に、指名されたみたい
だねなんて、言い合ってたものだ。

西川博文教授、まだ存命中だから、ひとまず准教授として取る。
二年して教授が退職すれば、次の教授に就任の手筈だったのに、

この計画は立ち消えた。



理由は何か。 当時、日大歯出身の病理のドカベンが、あたかも朝日
将軍よろしく我が歯学部を日大歯で乗っ取りかねない勢いだった。

ので小森先生みたい、日大歯の先生は、何かと抵抗感を呼んだのと、
当時の歯学部長が、安井利一(衛生学)教授でしょ。



この安井教授と西川教授、詳しくは問題教授列伝、安井教授の項で
書くが、つまりは安井教授が教授昇格の折、

西川教授、反対の旗振って、安井教授に、一年、足踏みさせた因縁
が有る。



そんなこんなで西川教授、小森先生を取ろうとしたのに、安井教授
無反応と言う反応にて潰しちゃった。

ワシ、それを見てて、小森先生の為にも非常に残念だった。 ワシ
いっその事、教授と高見センにアドバイスしたかった。



ワシがあの時、それをしとれば、次の教授は小森先生に成ってただ
ろう。 詳細は、安井利一教授のページに書く。

小森先生にして見れば、片手の掛かった教授の椅子である。 引っ剥
(ひっぱが)された様なものだ。

お痛(いた)わしや。



   *       *       *



我らの如き新卒のセンセが入局すると、エンドでは(何処でも)歓迎
の宴会をやらかす。

我らの時は、とり平(へい)なる料亭だった。 ワシ、偶然にも
小森規男先生の隣の席。 よろしく、とワシは言うたった。



お酒が入りて、気が少々大きく成り掛かった頃。 ワシ先生に、同じ
日大出身のドカベンの話なんぞ始めたのだ。

すると先生、人の噂は嫌だとばかりに、サッとあっちへ、行ってしま
われた。 残されたワシ、業腹だったので、



自分の料理を平らげた後は、小森先生の分も、ゴチに成ったのさ。
どうやら、あの時にこそ、小森規男先生の教授運、

ワシに喰われて消えたと思わるる。 小森先生は如何にも、我が
エンドの真の教授たる、高見英行センセの

二番手に甘んじうるよな、そんな面(つら)をされとった。




つまり本当の意味での教授ズラでは無い。 高見英行センは、そこ
を見抜いて教授に推薦しとるのよ。




だから小森先生が明海大へ来て、西川博文教授の後釜の教授に就任
して、高見英行センの尻に敷かれとれば良かったのである。

それでも、ともかく教授は教授である。 講師で退職したのと教授で
終わるのとでは、天と地だからな。



土下座しても良いから、一度は座りたい教授の椅子って言うじゃな
いか。 小森規男先生、ああ惜しい事をされましたと、

十年後の今日(こんにち)、思ってしまう。 タッチの差ですよ。
運命の女神が、横向いちゃったのよ。



これ小森先生には、死んでも死に切れぬ想い出であらうか。



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こんな具合に、明海大歯学部のエンドは、誰が教授に成ろうとも、
真の教授は開業歯科医の、高見英行様センセなのだ。

と言うのが怪談だと、ワシ、主張して見るのだが、違うかな?



ワシが言いたいのは、高見英行センセ。 そこまで学外から、影の
教授をなさるなら、

もうちょっとビシッとしても良かろにと思うからである。 それは
こう言うわけからだ。



次のページにて扱う 鉢ノ木勝則君だ。 ワシ、この同期生とエンド
に在局中、トラブルを惹起した。

その処断を、この高見英行センセに依頼したのだ。 反応無し。
こんな簡単な責任問題も解けない者が、



学外から教授の権力を行使すんなよと言うのが、ワシの言い分だ。
この問題にて、当の高見センセから反論でも来れば、

***************************************************************
ここに挿入す。
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コワモテ高見と呼ばれるセンセなのに、こんな問題の処理さえ出来
ないとは、情け無くないか?

そんな方が教授メーカーの権限など、僭越ですぞ。 では以下に、
この高見英行センの話題、書いて行く。



< 何故この不正力学が修正出来ないのか? >



修正出来ない最大のポイントは、エンド(歯内療法学)に実習が有る
からだ。 講義だけなら高見など追放すれば済む。

残念ながら実習が有る。 実習は、スタッフの先生を中心に、研修生
と非常勤の(開業歯科医の)先生方の協力無くして、

面倒見るの、不可能だ。



高見英行先生は、卒後長らくエンドに居た。 その上、西川博文教授
生存中は、ほぼ教授代行の気分。

スタッフの先生方に、ああせいこうせいと、部下を扱う調子にて
指示してた。



こう言う状態が気に入らぬ先生の中には、ごちゃごちゃ言うのも居た
が、飽くまで陰口のレベル。

なにしろ相手はコワモテ高見だ。 面と向かえば余程の無鉄砲者
以外、大人しく使われとった。



学外から集合した開業歯科医(非常勤講師)なら、いよいよもちて、
高見英行先生の味方である。

そりゃあそうでしょ。 高見英行先生と来れば埼玉県歯科医師会の
上から三番以内の、実力者だっせ。



そんな先生に歯向かうよな馬鹿、居ますかいな。 と言うわけで、
高見英行センセのエンドにおける強権力に、

いちゃもんなんぞ付けたならば、どんな不幸が招来するか想像する
までも無かろ。

てなわけで高見英行センセの権限、ほぼ絶対的。



   *       *       *



中嶌宏歯学部長の調停力を持ってしても、高見英行センセの権限は、
ピクともせぬ。

ですからワシも、こんな文章、書いた以上、無事に済みません。
指折り数えてお呼びの日を待つワシなればこそ、

こんな文を書けるのです。



***************************************************************



ワシ、高見英行先生に頼み申す。 今のエンドの状況は、明らかに
歪(いびつ)です。

学外の開業歯科医師が、実質教授では駄目なんです。



高見英行先生、自発的に、その権限を放棄願えないでしょうか?
その行為こそ、崇高なる紳士のそれでありましょう。

ワシ、期待してます。



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生前の西川博文教授、よくワシに、あのまま高見英行先生がエンド
に居れば、絶対彼が、ボクの次だった。

つまり西川教授の次は高見先生だったと言われてましたが、ワシ、
少々異論が御座います。



それは高見英行先生の講義です。 先生の講義は、歯界にまつわる
雑談としては、中々に面白いですが、

いわゆる教授レベルの組織的な講義で言うと、高見英行先生、それ
が出来ないのではないかと感ずるからです。




講義の調子が教授で無いのです。 雑談調です。



   *       *       *



また高見先生は、ケシカラン笑話をされました。 それは御自分の
歯科医院で右腕と言うべき、Aセンセの研究論文です。

先生はそれを茶にされました。 それはこうです。



Aセンセの研究ですが、チクワを想像して下さい。 その穴(あな)
に明太子を詰めて下さい。

そのチクワを包丁で輪切りにします。 その時、中に詰めた明太子が
どれだけ片方へ寄るかを、Aセンセは調べたらしいです。



高見英行先生、学生に向かいて、お笑いの感じにて、こんな研究に
どれだけの価値が有るのかねと言うて、

まあ君ら歯科学の博士号なんて、深刻に考えない方が良いよ。 こん
な笑える研究で博士に成れちゃうのだから。

ハハハッ、てなお話をされました。



   *       *       *



ワシは高見英行先生の、それやこれやの言動を総合して考察すると、
先生が大学を出た事に賛成です。

先生は残念ながら教授にふさわしく有りません。



故西川博文教授が、ご病気だったので、そこから現在の如き、歪
(いびつ)な力学の支配するエンド(歯内療法学)とは

成りましたが、ワシには高見英行先生が教授にふさわしき方と成る
為には、相当の人間的努力を要すと見てます。



しかし外見の押し出しは立派に教授ですから、先生、いっその事、
歯科医院を閉鎖して、御自分が、エンドの教授に

成ったらどうですか。 教授に成られてから真の教授に成れば良い
でしょうに。



それ程の覚悟も無しに、学外から教授の権限を行使するなど、邪悪
です。

今の権限を手放すか、又は、ご自分が大学に乗り込んで教授に成るか
どっちかにして下さいと、ワシ申して、終わります。



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