*  自分史 製造業系 ( 五十歳までのワシ。 鉄工所三十二年間の想ひ出 )  *   < kujila-books ホームへ帰る >

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第 4 章  *  ワシの同級生賛歌

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< 勝山清次君は長男なのに、清次である >





高校時代、戯れ歌が流行( はや )ってナ。
 勝山殺すに刃物は要らぬ。君、名前、清次なのに、
何で長男なんだと、聞けば良い。
 勝山君、あらかさまに顔しかめ、また聞くと腐る。
 これが面白くてね。この段の題名も、それなのさ。

まさか死ぬ事も有るまいと思うが? もしもだ、
この段の題名が元で早世なと、なされたならば、ワシ
 許して呉れええ 〜 ッ、ワシが原因で、こんな事に成ってと、
 派手に泣く積り。抜かり無く準備してますからご安心を。
 では勝っちゃん事、又は清ちゃん事、勝山清次君を語ってみる。

言っときますけど、ここの文、最初ウィギペディアに載せたのだ。
 一ヶ月で削除された。相応しく無いんだとさ。
 その上にだ。勝山君の所、荒しを理由に閉鎖された。
 ワシ、荒らしたんじゃ無いぞッ。ウィギの分らず屋どもメッ

そう言う いわく付きではあるのです。
再生・復活の貴重な文ですから、心して読んで下さい。




*     *     *





< 勝山清次君の、第一印象は >


勝山君は、次段の イッセ 〜 事、宮本一正君らと同じ根上中学校出身
である。

根上中学校と聞いて、何か思い出さぬか? そうなのだ、あの巨人軍
からヤンキースへ行った、松井秀樹選手の母校だ。

ついでに( 事の弾みで )総理大臣にも成った、あの 森善朗の母校で
もある。



現在の能美市、かっての根上町( ねあがりまち )。 ワシらが子供の
頃の根上町、海と砂と、ギラギラの太陽だけで、産業の全く無い、

安部公房の小説・砂の女の舞台みたい貧村だった。 それが、だ。
森善朗の父ちゃん、小松高校の校長だったのを、



村人、おみこしに担ぎ、町長にしちまった。 するとどうだ。
あの砂しか無かった根上町が、だ。

色んな企業に来て貰い、小松市を抜かぬばかりの発展を成し遂げた。
息子の森善朗なんざ、ある意味、国会議員で居れるのも、

父ちゃん様の、お陰なのだ。 森善朗の父ちゃんは、偉物( えらぶつ )
だった。



  *       *       *



それは良い、小松高校一年だった。 入学して教室へ入り、そこで問題の
勝山清次君と、バッタリしたんだが、

ワシの第一印象、こいつ、お父さん、エチオピア人か?



とにかく日焼け、ただ事でなかった。 ありゃもう地( じ )である。
真っ黒けっけの真っ黒け。

勝山君の顔見リャ分る。 口、馬鹿でかい。 ただし唇は端正に薄い。
骨相学的には、悪くない相である。



唇が分厚くて、馬鹿でかいと、意味、全く違ってしまう。 勝山君のは、
理知的に、ほど良き薄さの、馬鹿でかい口である。

であるから学者に成れたのだ。 分厚かったら政治家か金満家か艶福家に
でも成っとるよ。 その他、骨相学的意味、省略す。



  *       *       *



これが日焼けして真っ黒だから、こいつ本当に日本人なのか? と、
思ってしまったのさ。

日焼けは、野球部だから。 でもね、この章の最初に出た 曽田義則君。
同じ野球部ながら、あれ程の日焼けは、しとらんかった。



とにかく黒かった。 余りに黒いので、ワシ一瞬、ギョッとした。
危うく、君の父ちゃん、エチオピア人か? と聞きそうになった。

もっとも高校では野球部しなかったので、だんだん白くは成ったがね。



こんな風に勝山清次君、勉強は抜群の一番だ。 スポーツは、野球部の
レギュラーで活躍の、

文字通りに文武両道。 人気者だったのだ。 先生方の期待、大きく成る
はずだ。



しかも、だぜ。 隅( すみ )に置けぬと言うか、今の奥さん、冬美だか
春美だか知らねえが、

ありゃ小学校以来の、つまり初恋の相手なんよ。 初恋のまんま、ズ 〜 ッ
と還暦まで来ちゃった相手なんだ。



って事は、勝山清次君。 勉強とスポーツに加えてだ。 恋有り、ロマン
有りの、花も実もある オノコ、では、あったのだあ

ワシ、勝山君に、そんな隠し女が居たなんて、あとあとまで知らなかった。
ワシの知る勝山君、本読んでるか、勉強してるか、



ちったあ、おなごの尻( ケツ )でも、追い掛けたらどうか? と、いやみ
のひとつも、言うとこだった。

危うし、危うし。 お子様二人、男の子。 心配、いらねえんだよナ。



  *       *       *



勝山君には、妹と弟がおる。 弟は男だから良いとして、最初、彼の妹
さん、兄貴が、かくも、かくも真っ黒だから、

さぞかし色黒じゃ、なかろかと、胸を痛めておったのだが、実物に会うて
見れば、心配ご無用。



真珠の玉より、もっと白い、良い娘じゃないか。 ただし絶対に別品では
無い。 この姉ちゃんも今や、六十越しとるからな。

さだめし糞ババア 〜 やってんじゃないかと、推察す。 こんな風に
書くのはナ。 勝山君の妹、それほど大した美人でも無いのに、



理解不明ながら、やたらめったら持てたのだ。 我ら、七不思議のひとつ
に数えてた。

でも、もう良いのだ。 還暦過ぎの糞ババア 〜 だからなと、ついつい、
いじめてしまうのは、何故だか解るかい?

答えは言うなよ。



  *       *       *



弟の事、ひとつだけ書く。 ある時みんなで勝山君の家に行ったのさ。
寒い日だった。 高校時代の、だぜ。

オコタに弟さんも入ってた。 その余りに賢そうな表情に、ワシ、
正直、息を呑んだ。



こりゃ兄貴より出来るんじゃないかと、胸騒ぎが起こるほどに、賢そうな
少年に見えた。

結果、町役場に就職。 兄貴の勝山君いわく、あいつ、欲が無いから駄目
だ。 なるほどと、ワシは言うといた。



蛇足ながら、これを書くワシも、三十歳くらいまでは、何処へ行っても
久治良さんは賢いからと言われた。

なのにだ。 五十歳、明海大歯学部。 ワシ、足りないオッサン扱いされ、
往年のプライド、通用しなかった。 ニャロメだった。



  *       *       *



勝山清次君、愛称は勝っちゃん、又は清ちゃんだと、先に書いた。
小松市以外の方には、これの意味、判らんと思う。

実は、勝っちゃんも、清ちゃんも、小松市に有る中華料理店の名前な
のだ。

調べて見ると、両店共に、まだまだ健在だ。 小松の老舗( しにせ )
の中華料理店ではある。



そんなわけで、勝っちゃん、又は清ちゃんと呼べば、茶化してる感じに
成る。

こう言う偶然の一致も、面白い。 だから、おいッ、勝っちゃんへ、
ラーメンでも食いに行こうか。 なんて、下らん駄洒落も有り得たのだ。



しかし我らに、その手の駄洒落、少なかった。 その理由は、勝山君の
成績、抜群に良かったからだ。

最近は成績が良いと、いじめの対象にされるそうだが、それは国家の
一大事ではあるぞ。



  *       *       *



黒人社会が駄目なのも、そこなのだ。 黒人の、特にその下層社会では、
勉強しとる少年は、暴力の対象にされる。

不良集団が、勉強させないのである。 暴力で勉強を、止めさせるので
ある。 だから黒人の下層社会は、絶対に浮上しない。

浮上 出来ない。 若者の不良グループが、浮上させないのである。



ユダヤ社会が、何故あんなにも多くの成功者を出せるのか、と言う因子が
そこに有る。

ユダヤ人社会では、努力するものが尊敬される。 尊敬されたい若者は
努力しないと駄目だ。 浅薄無学は、軽い扱いしか受けない。



そんな社会だからこそ、優秀で努力する者は、民族の尊敬を集めるから、
本人も、国家的使命感に燃えるのだ。

産業が発展し、民意が向上し、国民生活は、いや増しに奥行きを増せる
要因である。 国家の発展は、このように、民意が高くないと進まない。



  *       *       *



日本の、この頃の、いじめ社会、黒人の下層社会と似て来たか?

日本の伝統的な価値観、崩壊してはいないか? この、いじめの
世代を通過したよな、学校秀才、成人すれば当然ながら、



似たもの同士で団結して利権集団を形成し、身を守る。 精神構造、
日本の大事より、仲間内の利益ばかり見て、生きる。

国家と言う視野を、持ち得ない。



つまりそれは、彼らの成長した環境世界の問題であり、受けた教育の問題
でもある。 現代日本の教育は、無機質の教育だ。

日本は今、飛んでも無いジレンマに、陥( おちい )ってる感じだぞ。
我ら全員、何かを忘れてる。 何かが身に付いていない。



  *       *       *



個の尊厳、個の尊厳と言いつつ、個の尊厳のレベル、低下する一方ではな
いか? ワシ、死ぬのは嫌だが、だからと言うて、ワシの命、

地球より重いとは、考えない。 歯科医師やってますとね、医療の現実、
見えて来る。 だって自分が医療、してんだもの、

見えて来ますよ。



医療は絶対に、患者の命を、地球より重く、扱ってはいません。 お金を
沢山持って来る患者、その金額の分だけは、

重そうに扱って貰えますけど。 開業医( 開業歯科医師 )の頭には、
経営の成立するしないが、常に有るわけでナ。



患者は、先生の、良い治療への心掛けと、金儲け意欲とのせめぎ合い
での足し算、引き算の結果にて、計られます。

命の軽重は、その為に、医師・歯科医師のひとりひとりで、変化いたし
ます。



たとえば、こうです。 ワシの知るある教授、お母さんがガンでした。
担当医師、抗ガン剤を処方。

教授は、医師でも歯科医師でもないけど、歯学部に居たから知識と見聞が
有る。 抗ガン剤治療を、断わった。



担当医師、激怒。 言う事を聞けない患者、この病院から出て行って呉れ
と、凄い剣幕。

話し合いが、成立しない。 看護師まで、急によそよそしくなり、病院
に居ずらい事、限りなし。



お母さん、泣いて息子の教授に頼んだ。 先生の言う通りに抗ガン剤を
飲みますから、喧嘩しないで下さいと ・ ・ ・

長く成る、この問題、別の所で扱( あつ )かおう。



  *       *       *



さて、いよいよウィギペディアに、一ヶ月で削除された文へ行くぞ。
高校時代、勝山君の生活の、いち寸描ではある。

ただし、かなり加筆・変形した。 原型を留めない位だ。 ウイギィには、
チョコットしか書けないからね。 しかも二年前だ。



こっちも進化ならぬ、老化してるしね。 老化とは、どうでも良くなるっ
て意味。 本当、老化すると、どうでも良くなっちゃう。

では行こう。



***********************************************************************



休み時間の、おしゃべりに、勝山清次君、いつも片手はコンサイス英和
辞典。

ワシらと話しつつ、チラチラと辞書に目をやる。 単語の暗記なんでしょ
うが、うざるこくてナ。 ( 目障りだの言い。)



おいッ、人と話する時くらい、その辞書、片付けろッ  何度言っ
たか判らん。

だけど勝山君、ちょっとニタ付く程度で、辞書、遂に引っ込めなかった。
強情者。 だから思い出の中の勝山君、

いつもコンサイス片手に登場す。



だけど、おしゃべりしながら、チラチラ単語の暗記だろ。 ワシ、腹立つ
から、対抗上、やっぱ本片手、

だけどワシが持つと、これ、コンサイスにならないんだナ。 ワシの片手
の本、ゲーテの詩集かヘルマンヘッセの詩集に成る。



この辺が、生まれ付いての違いと言う奴さ。 人間て、真似しても、真似し
ても、真似出来ないものが残る。

当時、妙な感慨に耽ったよ。



  *       *       *



勝山清次君、幼い頃より、大変な読書家であった。 ズボンのポケット
文庫本。 暇さえ有れば、出して読んでた。

あれだけの勉強して、さらに読書である。 高校を終えた頃には、自宅の
勉強部屋、文庫本でびっしりの本棚、四つばかり有ったそうな。



あの頃の本屋、岩波文庫、新潮文庫、角川文庫などが、びっしりの書架、
必ず有ったものだ。

そして、どんな時も何人かの学生、あれこれと物色してたものだ。 勝山
君だけじゃ無い。 次に出る宮本一正君、その他、ワシなぞも、

五冊、十冊と買って行った。



ワシの部屋にも、十八歳の頃。 文庫本で一杯の本棚。 三つ有った。
当時の高校生( 但し京大系 )、競争で読んでた。

あいつが読んでて、ワシが読まないなんて、許せん の気分
でナ。 教室で本読んでるのが居ると、

何と言う本を、読んでるんだい? と、



必ず本を持ち上げて、題名を見たものだ。 もちろん負けずに、同じも
の、こっちも読むのさ。

この点、東大へ行った奴ら、本、読まねえんだナ。 参考書ばっかし。
京大組は、参考書プラス、万巻( ばんかん )の書だった。

ただし、ワシが高校時代に見た東大組は、だけどね。



  *       *       *



ヘルマンヘッセは青春時代、世界文学の半分に目を通したそうだが、
勝山君なら、ひょっとして、それに近いかも知れん。

ワシは読んでて面白い本にぶつかると、そこで止まっちゃう癖( くせ )
が有り、駄目だった。

  *       *       *



ワシ、小学校の時。 図書館の本、全部、読んでやろうと心に決めた。
少年少女・世界文学全集の辺りまでは良かったんだが、

シートン動物記に、引っ掛かってよ。 余りの面白さに、先へ進まねえん
だ。 あれは失敗だったと、今に悔やまれる。



  *       *       *



宮本君、ある時ワシに、こんな話をした。

勝山君、大変だったと思う。 ボクだったら潰れてるね。
ワシ、良く判らんから説明しろと言うた。



勝山君はね。 小学校へ入った瞬間から、成績抜群。 スポーツも優秀。
みんなにも好かれただろ。

先生方の期待、物凄かった。 あれだけ期待されたら、苦しくなる。
息も出来ない位の期待を、されたのだ。  ワシ、へええ 〜 。



その中で、あそこまで行くのだから、感心する。 ボクなら、途中で
へたばるな。

ワシも、へたばるだろ。 もっとも、勝山君ほどの期待、持たれた記憶
無いから、想像上ではあるが。



  *       *       *



勝山清次君、結構、八方美人でナ。 ワシ、本人に言った事ある。 オメ
ェ 〜 は、八方美人だッ

本人、答えていわく。 そうかも知れない。



  *       *       *



勝山君、京都大学を受験した。 合格発表の日だ。 しょげてるのだ。
あいつが落ちる、わけが無い。

さては名前でも、書き忘れたか? 違うと本人。 じゃあ、何でしょげて
んだ? 聞いたらしい。 答えが馬鹿らしい。 いわく、



一番で合格してやろうと頑張ったのに、二番だったとさ。 聞いた同級生、
思わず、この、贅沢者ッ

怒鳴りつけたそうだが、ホンマ、贅沢な落胆では、あるまいか?
一番は、医学部の受験生だったそうな。

当時は、そんな入試制度だったのだナ。 今とは、別物だ。



だけど、東大に楽勝の成績だった勝っちゃん、京大を一番合格でも、大し
た自慢には、成らんと思うがね。

高校の進路指導の先生に、何で東大行かんのじゃ? 言われて、ぼくの
ヘソ、曲がってますからと言うたそうだが、

ワシも人生上、一回は言ってみたいセリフではある。



大学受験で苦労してる学生が聞いたら、ニャロメッ  と言いそ
な話題ではあるな。



  *       *       *



大学は卒業した。 学者コースだから、当然大学院。 博士課程を修了し
て後の二年間こそ、勝山君の人生の最大に類する、苦難だったかも知れぬ。

要するに京大に残れなかったのだ。 京大が採って呉れなかった。 博物
館にでも就職するか? または、高校の歴史の先生か?



悩んだと思う。 結局、二年浪人。 ワシの推測なれど、この二年間が、
エリート集団の先頭ばかり歩いて来た勝山君の心境に、

ある種の化学変化を、招来したと思う。 日本刀に焼きが入ったとでも
言おうか。



三年目、三重大学へ就職。 教授まで進んだ。 そして出身の京都大学の
大学院文学部の教授に成った。



  *       *       *



あの中西輝政も、京大から三重大。 のち京大の教授に戻った。 そう
言うルートが有るのだな。



  *       *       *



あれは勝山君が、三重大の頃だったかナ? 男山八幡宮の麓( ふもと )
に住んでた頃だ。

遊びに行ったのさ。 ほんじゃ、南禅寺にでも行こか。 ってんで、電車
で京都。

そこが問題でナ。 電車の中、歴史の専門誌に首ったけ。 ワシ、文句言
うたった。



おいッ、こらッ、人を接待しといて、本ばかり読んでる奴があるかッ
勝山君、ハハハッと笑いて、本をカバンに仕舞うと思いきや、

ワシを無視して、また活字に没頭しやがるのよ。 この、活字の虫めッ
と悪態付いて、負けてしまったよ。



  *       *       *



ワシも今は歯科医師だろ。 何であれ専門してるとな、専門外の素人との
対話、味気なくなっちゃう。

ワシと言う歴史学の素人と、半日付き合った勝山君、さぞかし味気なかった
だろうと思う。 彼、八方美人だから、おくびにも出さなかったがね。



ワシに友情が有るとするなら、邪魔しないのが、最高の思いやりかも
知れぬ。

もっとも、この雑文が目障りだ  と言うて来ても、聞かない
けどね。 勝と付き合ったお陰で、ワシも相当の強情者に成れたから。



  *       *       *



最近のワシ、歯科学の外、仲間と一緒に 韓国の経済や歴史なんかを調べ
てる。 まだ駆け出しの頃、大学の専門の先生のとこ、行ったのさ。



いろいろ聞かれてナ。 こいつド素人だなと、足元、見られたわけだ。
先生それじゃあ、言うて、参考書六百冊ばかしの、リスト呉れた。

これ全部読んで、それから又来て下さい。 体( てい )よく追い払わ
れた。 ( このリスト、やがて書いとくから参考にして呉れい。)



専門家ちゅうのは、同じ人間なれど、意識が、別世界になるものだ。
だけど人間に生まれた以上、その専門性、ひとつで良いから、

極めるべきかも。 さも無いと、人生に深みが出無い。 仕事に奥行きが
生まれない。 その分野の本、まずは二百冊読め。



ワシは、今、歯科学でそれを励( はげ )んでる。 ついでに韓国経済で
も試みとる。 君も、君の専門分野にて、それを実行すべし。



  *       *       *



勝山清次君の専門分野は、日本中世史だ。 著書も何冊か出しておる。
やがてヒマを見て、その一冊を紹介したく思う。

読み易いのには驚いた。 専門書だから入手し難( がた )いのが難だ
がな。



ただし専門外の我ら、理解出来ん部分も多い。 でも読める事は読める。
是非なんとか、近日中に、勝山君の一冊を紹介す。



  *       *       *



ここで、若き日の彼を知る者として、言うとだな。 勝山君の日本中世史
は何となく、あるものを避けてる気配が、漂うのだな。

勝山君、何を避けとるのか?



中世史を少し遡( さかのぼ )れば、上代に至( いた )る。 上代では
日本、中国・朝鮮との関係が出て来る。

今度は逆に、中世から近世へ降( くだ )って見る。



こりゃまた、近隣・諸外国との関係が出て来る。 勝山君の専門は中世の
寺社文書( もんじょ )、地租・年貢のたぐいだ。

これだって人間関係の、ギタギタした、欲の絡む、いやらしい世界なれど、
中国、朝鮮との関係よりは、マシである。



とにかく勝山君の中世史志向、何かを避けた結果のように、ワシには思
えて仕方ない。

それを見てると勝山君、医学部へでも行き、患者相手の臨床なんかせずに、
遺伝子だとか免疫の研究でもした方が、良かったかな?

と思ったりする。 科学の研究だと、人間関係や社会関係が出て来ない。
でもな、若い頃の読書の志向分野を見てると、やっぱ歴史へ行くしか

無いだろなと、思い返す。



  *       *       *



中西輝政先生みたい、現在の、特に東アジアの国家関係なんか研究して、
発言すれば、身の危険さえ感じる時が有る。

ワシでさえ、そうなのだ。 韓国の経済を研究して、ウエブに出すと言う
ただけで、仲間が恐い言うて逃げ出すんよ。 あれには驚いた。



日中・日韓の問題で発言する時は、だな。 肝( きも )が 座ってな
いと無理だね。

中国や韓国から、日本の良識有る知識人と言われるような、ヨイショの発言
するのも手だが、それはそれで 百年後には必ず、

犬と言われちゃうしな。 大江健三郎や和田春樹や高崎宗司の百年後を見た
いよ。 必ず 犬と言われる。




中国や韓国の歴史発言は、ありゃ儒教論理だからね。 日本の儒教は教養
だけど、韓国の儒教は、国家の体制である。

国民生活の規範である。 儒教では、事実がどうであるかを問題としない。
事実が、どうであるべきかを問題とする。




だから、そんな世界観からの発言を、ヨイショする日本人は、歴史の事実
との落差から、いつの日にか笑われる。

この韓国の儒教世界観は、我ら日本人には理解困難である。 日本の儒教は、
戦前の皇国史観に潜むそうだ。 それを見れば判る。



皇国史観の始原は、江戸期の朱子学者 山鹿素行らしい。 儒教であるから、
皇国の史観、事実がどうで有ったかでは無く、

事実は、こうでなくてはならないに成っとる。 以下長く成る。 韓国経
済の研究に譲る。



  *       *       *



言っとくが、以上は勝山君の説にあらず。 ワシの研究の一部だ。 南禅
寺での勝山君、南禅寺が、どんな資金で建てられたかなど、

ワシに語ってくれた。 ありゃ足利時代、明との貿易での、文書の代行料
だったかな?



京五山の学僧の漢文の学識、中国との貿易に必要だったらしい。 その
手数料が、今日の豪壮な寺院建築に成っとるんだそうだ。

三十年前だろ。 調子に乗って変な事書くと、違うぞと文句言われるから、
この辺で止める。 是非、勝山清次君の著書に、直接、聞いて呉れ。



  *       *       *



南禅寺を出て、ソバを喰った。 路地の奥の、奇怪な内部構造の家でナ。
勝山君いわく、

こりゃ、皇族の住居なんだ。 ワシ、へエエ 〜 ッ。 何とも言えぬ、
ややこし造りだな。 家の中で、かくれんぼが出来る。 さてだ、



京都のメシは、とかくにマズイ。 だいたいソバなんて、ありゃ備荒食
だぜ。 食べる物の無い、飢饉の時に、仕方なく食べるのが備荒食だ。

そんなもの、美味いわけないだろ。 だからソバは、不味い物なのだ。
それを美味い、美味い言うて、ワシらは喰った。



その時、勝山君、あのイギリスの歴史家、トインビーを語った。 何を
聞いたか、憶えてるわけが無いが。

ただね最近、広瀬隆の本、赤い盾を読んで、ちょいビックリした事を記す。
あのトインビー、最初はイギリスの対外諜報部の、MI 6 に居た。



007 の本を書いた、諜報部出身のイアン・フレミングの、上司だった
のだ。

つまりアーノルド・トインビーは、イギリスのスパイ組織に居た人だった
のである。




トインビーが日本へ、創価学会の名誉会長されとる 池田大作氏と会いに
来た記事と写真。 ワシはある方から見せられたが、

当時は感心しただけ。 だけど広瀬隆の本を読み、ギクッとした。 トイ
ンビーはスパイだ。 池田創価学会の、何を探りに来たのか?



トインビーを、世界的に有名な歴史家だ、著名人だと、単純に思い込んでる
と、ドジを踏む恐れが有る。

トインビー自身、池田大作氏と共著など出して友好関係だったけど、親族
は拒絶反応だった。 あれは何を意味するのだろう?

創価学会は、欧州では、オカルト教団に分類されておるのを、ご存知か?
その判定とアーノルド・トインビーに、関係は無いのか?



トインビーの来日、何かの意図を含んでいたのか? いなかったのか?
世界的な歴史学者だと、単純に油断してて良いのか?

あの大部の歴史の研究書に、幻惑されてちゃマズイかも知れぬ相手かもよ。
この辺の見方、日本は疎いのだナ。



また、イギリスの諜報部には、歴史・文学・哲学の世界的権威レベルの
人材が、多数在籍しとる事、

日本との文化の違いを痛感す。



  *       *       *



勝山清次君、ある時ワシに言うた。 大学の教授と言う者を見てるとだな。
その体形、二種類しか無いように思う。

チビだけど骨太で、がっしりタイプか、もひとつは、大男タイプ。 大学
教授には、この二種類の人間しか居ないように思える。



と言う勝山君は、中肉中背で、やや細身。 二種類の外( そと )である。
かく言うワシも、似たような体形。

満田君( 田上満君 )なんかは、大男のがっしり型である。 ワシ、高校
時代、きゃつの背中を見て過ごしたから、肩幅の広さと胸板の厚さには、

記憶がある。



  *       *       *



学者言うものは料理家と似て、一代では、真の意味の学者には、成れぬの
では、なかろか?

真の学者、言うのは、学者らしい学者とでも言おうか。 祖父が学者で、
親また学者。 こんな家に生まるれば、嫌でも学者の雰囲気に染まる。



そう言う下地の有った学者は、無かった学者より、どこか違うのでは、な
かろか? と思ってみる。

勝山清次君は、学者である。 だけどその著作を読んで見ると、ワシには
その文章に、学者の香り、いまいち乏しいように思えてならぬ。




桑原武夫じゃないが、いわゆる京都学派の香りって奴が、有らま欲しい。
プンプンと、漂って欲しいのだな。




こりゃ、無いものねだりかも知れぬが、這えば立て、立てば歩めって奴
でナ。 勝山君みたい優秀な人間は、上を上をと際限も無く

期待されるのだ。 そんな気分からの一行と思って呉れ。



  *       *       *



不思議なのは勝山君の父ちゃん、ガチャンコ屋だ。 あの小松高校一番
入学で、一番卒業の満田君こと田上満君の父ちゃんも同じく

ガチャンコ屋。 ガチャンコ屋とは、加賀綸子( リンズ )、つまり
糸から絹織物を織る、機屋( はたや )さんの事だ。



ワシが芦城中学校の三年後期、生徒会副会長の時の会長だった 園井健二
君は、お兄さんともども、東大だったけど、

彼のお父さん、小松製作所の機械場の職人だった。 こんな父ちゃん達な
ら、さぞかし良い仕事、したろうよ。



こんな風に、つい最近まで、息子が東大やら京大へ行くよな父ちゃんが、
絹織物織ったり、機械の部品を加工してたり、してたのだ。

現代の日本、こんな職人、もう居ないからね。 昔は居たのだ。 学校制
度がそれを、無くしたのだ。



日本は、職人の国だなんて、昔の夢、見てると、ドジ踏むぞ。 学校制度
と言う ろ過装置、

日本人を奇麗に分類して、階層別に、分離しちゃったからな。 息子が東
大や京大の職人、もう居ないからね。



これのマイナス効果、ジワッと利いて来るぞ。



  *       *       *



勝山君については、こんなものだ。 気付いた事でも出れば、追加する。
次の段では イッセ 事、宮本一正君( かずまさ君 )を書く。

考えて見ると面白い。 勝山清次君と宮本一正君は、小学校以来、京都大
学から、同大学院まで、ズウウッ 〜 と同窓なのだ。



ただし宮本一正君、一浪して予備校が挟まっとる。 宮本君も京大だから
秀才なんでしょうが、

その割に、秀才っぽく無い。 むしろワシなんかの方が、それっぽかった。
勝山君、宮本君らの大学時代は、そして、あの、学生運動の、



最も華やかなりし頃でね。 ご両名共に、田舎へ疎開しとった。
ワシが、もし、当時に大学生でも、やっぱ疎開しただろうな。

ノンポリでも無い。 何か性に合わぬのだ。 ま、そんな話は、次段にて
しよう。 では ・ ・ ・






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