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第 三 章  *  3 / 6  

< 歯科医師から見た、インプラント >


* 副題 * インプラントが、打てる様に成りたい先生方へ 





前段の続き、歯周病の原因と、歯周病に成らない生活を、書く。

ワシが、ここで書く歯周病は、大学の研究とチョイ違う。 患者から言う
なら、研究なんて、クソ喰らえ、なんだ。

ペニシリンが発見された当初、何故利くのか? どんな機序(きじょ)で利
くのか? 解からんだ。 だけど劇的に利くんで、使用された。 第二次
大戦の頃、イギリスのチャーチル。 肺炎に掛かり、ペニシリンで治った。


対独戦、イギリスの勝利。 このペニシリンと、ポリエチレンの発明だと、
言われておる。 ペニシリンが無ければ、チャーチルは死んでいたろうし、

ポリエチレンのような、高性能の絶縁体が無ければ、レーダーは作動
しなかった。


歯周病も同じで、治れば良いんだ。 治せない研究は困る。 活字本の
様に、長々と書けない。 文句覚悟で、要点を書く。 心当りの方、

参考にしてくれい。


 *     *     *


歯周病に関る(かかわる)因子、三つ有る。

広い意味での免疫力と、口腔衛生(お口がきれいか、汚いか?)と、生活の
相だ。 生活の相とは、あなたの生活、ストレスフルか? 否か? だ。


お口の中、グチャグチャ。 なのに歯周病に成って無い。 こんな患者、
結構見る。 反対にお口の中、ピカピカ、表彰したい位の患者。

歯周病に成って、歯の根っ子まで見える。 歯を支える骨、吸収されて、
ひどいもんだ。 何んだよ、これ?


我ら大学で講義される。 歯と歯肉(しにく)の溝(みぞ:歯周溝)を汚く
してると、細菌が繁殖する。 細菌の出す毒素が、歯肉を痛める。 歯肉の

免疫が変調して、自分で自分の骨を溶かす。



この理論だと、歯ぐきの汚れを取れば、歯周病は治る。 汚れ一切無く、
ピカピカの方、歯周病の心配、無いはずなのに、事実は反対なんじゃ。

ピカピカが歯周病に成る(ことが有る)。歯ぐき真っ黒けが、歯周病に
なっとらん。 おかしやないか?



これに答えたのが、阿保(あぼ)先生と西原先生じゃ。 ワシのはその、
受け売り。

生活ストレスフル。 精神状態、否定的でマイナス気味。
この人、交感神経ビリビリ。 血液中の好中球、過剰。


好中球の寿命は、一日だ。 毎日何百万と壊れる。 好中球が壊れると、
ブリーチなんかと同じ成分、次亜塩素酸、その辺に出る。 たまらんぜ。

身体の酵素が、直に中和しても、周りの組織、ダメージを受ける。
好中球の、一番行き易い所、ケツの穴と歯ぐき、なんじゃ。



歯周病の患者を見ると、ワシいつも聞く。 痔は大丈夫? 痔も歯周病も
同じ原因だもの。 ただしこれ、痔と歯周病の、あるものは、だよ。

身体を、交感神経、優位にするもの。 仕事のストレス。 夜の付き合い。
酒タバコ。 怒り。 恐怖。 これ全部、交感神経を興奮させる。


歴史上、一番のストレスは、第一次大戦の塹壕戦(ざんごうせん)に参加
の兵士。 歯周病で歯ぐきグチャグチャ。 後方へ下がると、軽くなる。

仕事や人間関係でストレスフルの方、せめて口の中、きれいにしよう。



 *     *     *




< 詳しくは、健康食、長寿食を巡る、く じらの冒険。にて・・>



ストレスを減らせ、言うのは簡単。 だけど仕事、止められるか?
人間関係、切れるか? 酒止められるか? タバコで口の中、肺の中、

一酸化炭素とニコチンが充満よ。 と言うて、禁煙出来るか?


生きること自体がストレス。 せめて免疫力を落とさない工夫、大切だ。

酒、少しでも良く無い。 のん兵衛のワシが言うのも変だが、あれ
睡眠時間が、短くなる。 交感神経を興奮させるんじゃ。


少しの酒も良くない、言うのは、だんだん量が増えて、大酒になっち
まうから。 銚子一本で我慢できる方なら、かまわんよ。 ワシ、飲む時は

死ぬほど飲む。 ただし週一回のみ。 後は飲まない。


とにかく酒ばかりじゃ無い。 生活の全部から、ストレスを減らせ。
歯周病は、免疫力の強弱で、出現する。

しかもこいつ、沈黙の病(やまい)言うて、自覚症状が出た時は、手遅れじゃ。
肝臓の病(やまい)と似とる。



歯医者で言われるぜ、何故もっと早く、来なかったんですか? 手遅れです!
ワシも歯周病は、専門外なんで、いつも手遅れじゃを、やっとる。(冗談!)

歯周病は(痔と同じ)、自己破壊疾患だから、まず生活から改善する。



歯と歯ぐきをきれいにしつつ、ストレスを除去しないと、良い結果、得られ
無い。 ストレスが有る。 歯周病の始まった方・・・

歯ぐきを汚し(よごし)てる。 かみ合わせに問題が有る。(早期接触が
有る。どれかの歯が、先に当る)


この時、歯周病。 ドドドーッと急激に行ってしまう。 たいていは、歯を無
くして終わる。 全部抜きましょうなんて、言われるワケだ。

歯を失うと、歯周病も消える。 ここが愉快な点で、確かに歯の周りの病
(やまい)だよ。 歯周病は! 歯が無くなれば、歯周も無いからの。


若い内から、気を付けてないと、おもしろい歯なし(話)に、なっちまう。
と言う話(歯無し)だ。


< 教えると言うこと。 インプラントを打てるように、成りたい人へ >


アサヒビールが、スーパードライを出すまで、ビールはどこも、同じ味が
した。 スーパードライは、革命だった。 こんなビールが、造れるんだ!

歯科医師の世界にも、スーパードライ級の革命。 それがインプラントだ!


インプラントの先生。 年収二億、三億。 ザラだんす。 月二千万、
三千万の世界だ。

だからインプラント、打てるか打てないかで、天国と地獄の差。


諸君らが、本屋へ行く。 目に付くインプラントの本、患者向け。 悪い
こと、書かんわいなあ。 良い面だけ書いて、最後、わたしの所で、

インプラント、打ちましょう。 これ宣伝だがや。 こんな本も、読まぬ
より、読んだ方が良いに決まってるが、


それらの本には、書いて無い部分がある。 その書いてない部分を、ワシ、
この本に書こう、てんだ。 歯科医師の内輪話。

諸君らの、あずかり知らぬ世界。 読んで損には、ならんはず。
一歩間違えば、際物(きわもの)に成る。 際物にはせん(しない)積り。


 *     *     *


歯科医師、インプラントと聞くと、反射的に、儲かる! と思う。
大学の講義で、教授から、こんな話、聞かされた。

インプラントで有名な、ある先生だ。 休みの日、奥さん連れて銀ブラ。
ウインドショッピング。 とある宝石店の前。 店長飛び出して来た。


先生!先生! 良い宝石が有るんです! 見て行って下さい!

先生。 今日は買わないよ。 買わないよ。 店長、買わなくて良いん
です。 見るだけで結構ですからと、店の中へ、先生を引きずり込んだ。


買わない、買わないと言ってた先生。 結局五百万ばか、買ってしまった。
この先生、年収二億とも、三億とも言われてる。 ある時この先生の講義、

インプラントが、いかに患者の生活の質(クオリティー,オブ.ライフ)、
引き上げるかを、話された。


だけど先生。 今の講義。 それ、インホームド.コンセントじゃ有りま
せんよ。 それ、セールス.トークじゃないですか?

この先生、大学に来られても、自分の利益にならん事、一切反応しない。
学生、インプラントの英雄を見る目で挨拶しても、完璧に無反応。


諸君、ワシのこの文を、嫌味(いやみ)と読んではいかん。 年収二億、
三億の人、金に成らん事には、鼻も引っ掛けないのが、正解なんじゃ。

ワシむしろ、その徹底振りに、感心した。 ただし、教育者としては、
落第。


学生で、この先生の歯科病院を見学した者に、話を聞いた。

(ビルの中の)入り口のドアー。 厚いヒノキの漆塗り。 貧乏人は
あれ見たら、駄目ですね。 入れません。

ギギギーと開けると受付、極め付けの美人。 最敬礼でお出迎え。


金掛かるなーと、感じましたね。 自費しか無いんですが、予約
ビッシリ。 宣伝して無いのに、金持ちの客、あれだけ集めるん
ですから、あの先生、スターですよ。


夫婦で銀座、ぶらついてると、宝石屋の店長、飛び出して来るだけの事、
ある訳だ。 こんな風に、インプラントの威力、革命的なんじゃ。


 *     *     *


同じく大学へ来る先生に、学生を焚き(たき)つける方、居られた。


君たちインプラントを学びたまえ! 月収二千万、三千万の世界だぞ!


これ聞いて、気持ちハイに成って、舞い上がってしまった学生、結構居た。
後で、ワシに聞くんじゃよ。

久治良さん。 ボクの年収、三億は良いんですが、税務署がうるさくて、
うるさくて、寝られないんです。


税金、払わないで済む方法、教えて下さい!



ワシ、あっけに取られ。 空いた口、ふさがらなかった。
これが世に言う、取らぬ狸の皮算用だ。 いやこの子、取るかも知れんよ。
本人は、もう取った気で居たからね。

この手の子、成績優秀者に多い。 喜ぶべきか? 悲しむべきか?


 *     *     *


現在の日本で、インプラントで億の先生、百人とも二百人とも、言われて
いる。 歯科医師の総数、十万人。 一握りだ。 この一握りの世界へ、
入れるか入れないか、大問題なんよ!


卒業して五年、ワシ、この目で七名のインプラント、ミリオネーラーを見た。
豊かさ、桁違い。 かと言って、別に羨ましくも無いのが、日本の

良い所(ところ)。すごい金持ちと、すごい貧乏人が、一緒の町で暮してる
日本。



ワシみたい、生活費、稼いだら仕事お仕舞い。 好きな本、読んどる偏屈
者が、年収二億の先生と隔意なく、普通に話せる日本。 アメリカが来て、
これを壊そうとしてる、日本。 

最近、オレはネットカフェ難民だ。 言う若者に出会ったが、口の中見ると、
歯より先に、軟組織がいかれてた。 


これ食べ物の、栄養素の問題。 きみ、毎日、何喰っとるんだ? 聞いた
んよ。 主食がカップラーメンで、副食、駄菓子。 値引きした食パン。

オメエ、長生きせんぞ。 言うと、ケタケタ笑うのね。 若いうちは良い
だろう。 五十過ぎたら、健康で、苦しむぞ。

生老病死、言うてな。 生と老と死は、逆立ちしても避けられん。 必ず
来る。 しかし病(やまい)は、注意して、自分から招く事、しちゃあ、
いかんぞな、もし!


ワーキングプア、ボクシングのボディーブローだ。 ずっと先で利いて
来る。 お腹(なか)、膨れるだけの食事。 晩年に後悔するぞ。

飢饉の国なら、いざ知らず。 日本、幸いな事に良い食材が、安く手に
入る。 工夫次第で何とかしろ!


ネットカフェ言う位だから、ウエブでこの本、読んでたら、ビタミンとミ
ネラルに関心を持て! 食費、月二万でも栄養、取れる! 研究しろ。


 *     *     *


話がそれた。 インプラントだ。 これからインプラントを学びたい貴君、
教える先生の吟味、心掛けよ。 インプラントの名人、必ずしも、教える
名人では無いぞ!


ワシ、こんな先生を見た。

インプラント十五年です。 教えますの看板。 その十五年で、インプラ
ント、打てるように成った先生、何人作りましたか?

先生のお陰で、打てるようになって、ガンガン仕事してる先生、何人いま
すか?


答えは、ゼロだった。 一人も居ない。 ちなみにこの先生の所で、一人
前に成った、新卒の先生も、無し。 この先生の所から、独立開業した先

生も無い。 看板に偽り有り、じゃよ。 教える教えると言いながら、
この先生、何も教えない。 こんな先生の所へ、行っては行けない。


なのに、この先生の病院、若い先生で一杯なのだ。 あれから五年、この
先生の二十年。 インプラント、打てるように成った先生、やはり一人も

出ない。 なのに若い先生、入れ替わり立ち代り、いつも一杯。 世の中、
こう言う事が、多いんよ。 これが見抜けないと、人生、どじを踏む。


インプラントを志す先生、上記の様な先生に、付いてはいけない。
では、どこへ行けば良いか? ワシ、インプラントを打つ先生なら、結構知

ってるがインプラントを教える先生となると、一箇所しか言えぬ。
それを言う。


 *     *     *


我が明海大歯学部、講座でインプラントを打つのは、第一口腔外科と、歯周
病科である。 第一口腔外科は、ある特定の先生だけが、集中して打つ。

若い先生、豚顎(とんがく)の練習だけ。 患者には触らせてもらえ無い。
ややフラストレーション気味。


行くなら歯周病科だ。 担当責任者、申(しん)教授。 歯周外科で日本を
代表する先生。 今や世界的な評価。 お名前から判る様に、韓国人である。
実力で、教授職を勝ち取られた。


講義でいわく。 インプラント、最短五年。 ステップを踏み、カリキュ
ラムに従い、打てるようにする。 合格点を取れなければ、十年でも打たせ

ない。 これがボクのやり方だ。
志(こころざし)有れば、いつでも来い!


歯周病科のスタッフの先生、全てインプラントを打つ。 打てない様な者、
スタッフにはしない。 申(しん)教授のお陰で、打てる様になった先生、
ワシの知る範囲で、五名。 最近一人が、独立して開業。

インプラント打ちまくりで、ゴツウ稼いでおる。 これこそ師の恩だ。
打てるように成った先生、毎朝教授の方角、手を合わせてるか?
恩を忘れたら、罰(ばち)当るで。


これからインプラントを、打てる様になりたい方。 参考にしてくれ。


開業歯科医が、インプラントを学ぶ時も、同じだ。 指導の先生が、教え
るのが上手いタイプか? どうか? これを見極めないと、あかんで。


打つ名人。 必ずしも、教える名人には、有らず! じゃよ。


 *     *     *


教える様で、絶対に教えない先生。 結構、多い。
見分ける方法は、簡単。 長い目で見て、弟子が育っているか、どうか?

結果は、歴然よ。 十五年だ。 良い弟子が、ワンサカ生み出された先生
に、付くべき。


十五年。 先生の周り、小物ばかりなら、教える名人では無い、と言う事。
そんな先生を教育機関に置けば、害になるのみ。


大学が、教授を採用する。 臨床の腕、研究のレベル、論文の数。 それ
以外に、教育者としての能力。 良い弟子を、育てられる人柄をも、採用

の条件に、して欲しい。 出来れば、自分を越えた弟子。 作れる人物を
教授に採用すべきだ。


教授の定年退職。 どんな弟子、どんな後継者を残したか? を見よ。
いけない教授の講座。 教授、どんなに偉大でも、自分を越えそうな弟子。

みんな追い出しとる。 この教授、臨床家として、研究者として、業績、
どんなに優秀でも、教育者としては、落第。


明海大歯学部は、論文、日本の歯学部の下から二位。 どう見ても研究大
学じゃ無いわな。 教授採用には是非とも、教育者としての可能性。

充分に吟味して、貰いたい。


 *     *     *


ワシ、大学を出る時、意中の先生が居た。 愛称、バタヤン。 電話したの
だ。 定員オーバー。 順番付いて、待ってる先生まで居る。 とても無理。

しょうがない。 別を探した。 意中の先生をA、とする。 実際に行った
先生を、Bとする。 比較してみると、面白い。


A先生のところから、これまでに五名の先生が、独立。 毎年集まって、
先生の謝恩会を開いておる。 A先生の病院、新卒の先生、最初の一年、

見学のみ。 患者に触る事、無し。 なのに新卒の先生、全員一人前に成り、
巣立って行く。


片やB先生の所。 独立して開業の先生、まだ一人も無し。 もっといかん
のは、新卒の先生で、三ヶ月以上、永つずきした者、一人も無し。

来たその日から、一人前の働き、求められる。 ワシ言った。 先生、そり
ゃ、育ててるんじゃ無くて、壊してるんですよ。


先生、反論した。 わたし、どこまで付いて来れるか、見たいの。 付いて
来れない人、いらないの。 つまり、辞めてくれと言っとるわけだ。

分院多く、合せて十二名の勤務医。 見ると面白い。 新卒、居ないのだ。
全員、一、二年、どこかで過した後(のち)、採用された人。


これじゃあ先生、新卒、取らない方が良いですよ。 罪を作るだけだ。
人生、先へ行って、必ず良く無い。 どこかで反動が来る。 どんな反動が
来るか? そこまでは、言い兼ねますがね。

くだんの先生、何も言わなかった。


 *     *     *


こんな風に、教えるのも、才能のひとつ、なのだ。
大学が、新規に教授を採用する時、論文の数なんて、参考だよ。 その候補
者、教える事に、才能を持つかどうか? そこを見抜かな、あかん。


大学は教育機関だ。 インプラントの打てる人を取る時、あなたは今までに、
何人の弟子。 打てる様に、しましたか? と、何んで聞かんのや? 

弟子、一人も言え無い先生は、採用するな!


< あくび >


あくびなら、珍しくも無い。 と早合点されては困る。 只(ただ)のあく
びじゃあ、ねえんだ。 我が二十九期、A君としておこう。 相手、英国人

だ。 つまり英会話の先生。 先生がA君に説明しとる。 A君、真っ直ぐ
先生の顔、見とるわなあ。 そのままだぜ。 そのままの姿勢でA君、

大あくび。 ワシ横で見てて、あっけに取られた。 あくび
済ませたA君、別に悪びれる風も無く、英国人の顔、見とる。


これには、先生の方が当てられて、言ってた事、忘れてしまい、肩すぼめて
おいて、あっちへ行って仕舞われた。 A君いわく、何んだい、変な先生。

このA君、次の年もまた大あくび、相手は口腔外科の教授だった。 教授、
講義中。 A君、前から二列目。 講義する教授の直ぐ前だ。


教授の顔、見たまま大あくび。 教授あっけに取られて、講義中断。
ごくり、生唾(なまつば)、飲み込まれてから言われた。

あのなあ君。 失礼な事、すんなよ。 礼儀ちゅうもんを、わきまえろ。
A君、自分が失礼したなんて、思って無いから、悪びれた風も無い。

カエルの面(つら)に、小便だった。



その頃のワシ、こんなのを見ると、世も末だ、日本もお仕舞いだと、嘆いた
ものだが、卒業して臨床してみると、先生の顔見たまま、大あくびの方が、
何かと巾(はば)を利かせて居る。

やがてワシも、朱(しゅ:赤色)に交わって赤くなったのか、あくびは、
しなかったが、居眠りはする。 教授が黒板を向いとるスキに、お茶は飲む。


コンビニのおにぎりは喰う。 これで、やっと人並みに、成れたのだ! と
嬉しくなったもんじゃ。


< 大学の講義、インプラントに係わる部分、集めてみた >


当時の歯学部長、故山本教授、口腔外科第一の担当だった。
口腔外科に、第一と第二がある。 どこが違うんですか? 良く聞かれる。

違いは、無し。 口腔外科の患者が多いから、二つ造っただけ。


する事、同じだから当然、鞘当が起こる。 それはさて置き、我が明海大
歯学部の儲け頭(がしら)。 口腔外科と言いたい所だが、矯正歯科が一番

口腔外科は二番。 それがインプラントのお陰で、この順位、逆転しそう。



明海大は山本教授の戦略で、1980年代より、インプラント。
教授の講義、あの頃はねえ、来る日も来る日も、毎日毎日、開業医の失敗

インプラントの除去手術だった。 これじゃあインプラントや、のうて、
アウトプラントやと、嘆いておった、もんじゃ。


口腔外科医から見て、外科的素養(そよう)、乏しいまま、骨をいじるから
失敗する。 ここは一つ、正しいインプラントを提唱せな、あかん。
と言う所から、始めたんや。


山本教授はスエーデンの、ブローネマルク教授を訪ねて幾千里。 骨結合
タイプのインプラント、学んで来られた。

ブローネマルク教授の本業、解剖学者。 インプラントの発明者である。


これを導入して明海大、インプラントを始めた。 たちまち悪口。 国立
医科歯科大の先生に、口腔外科がインプラントを打つなんて、気でも狂っ

たのかっ! 一喝されたよ。 あの頃のインプラント、失敗の山だった。


日本の患者さん、失敗しても文句、言わんのね。 有り難い国民です。
失敗の山なのに、歯科医師は、ひと財産、作った。

我が明海大のインプラントを見よ。 九十八パーセントの成功率。
上部構造が乗らなかった事、一例も無し。 つまり全部、成功しとるのだ。


この時、お前やれ、言うて打たされたのは、今の嶋田教授。 80年代のイ
ンプラントは、肩身が狭くてね。 ボク本当は、打ちたくなかった。

親分が、打て言うから、仕方なしに打っていた。 診療室のすみっこ。
白い目、気にしながら、やだな、やだなと、打っていた。


 *     *     *


それが今じゃ、ネコも杓子もインプラント、だからね。 ボクに言わせりゃ、
浅ましいよ。 あの頃、酷い事言った先生に、謝ってもらいたいね。


2002年時点で、嶋田教授のインプラントは、三千本である。
この数を見て、なんだオレの方が、多いぞと言う先生、早合点だ。

嶋田教授の本業、口腔外科である。 上下の顎切り、腫瘍の除去、顎顔面
の外傷の復元。 これが毎日の仕事だ。


インプラントは、その合間、合間の余技。 インプラントだけ打ってる先生
と、生活が違うのだ。 そこを知った上で、言ってもらいたい。


ちなみに嶋田教授の得意、(美容的)顎(がく)切り。 矯正歯科と協力
して、出すぎた顎、退り過ぎの顎、上下の顎のアンバランス、外科的に

矯正する。 顔が別人に成る。 美容だと自費だが、これを咬合不全の
治療と考えれば、保険で出来る。


雑誌なんか見て、東京の歯科病院で治療すると、三百万、四百万、掛かる。
患者さん、知らないのね。 ウチ来て保険ですれば、同じ手術、六十万位で
出来る。 これ、嶋田教授が、講義で言われた言葉。


矯正も最近は、インプラントを利用する。 ほっぺたの後ろ辺りに、小さい
インプラントを一本打ち、それをアンカーにして、歯を動かす。

用が済めば、撤去する。 これだと装置が、簡単。 歯科矯正を一変させた。
お子さんの矯正を、お考えの方。 参考にすべき。


 *     *     *


インプラント、次に有望なのは、入れ歯の難症例だ。 顎の骨が低い。
総入れ歯、吸着せん。 すぐ外れる。 インプラントが解決する。

虫歯なんかで大臼歯の一本も無い患者。 入れ歯、片持ちだから、後方、
ブカブカ持ち上がる。 ここへインプラント。 支持が出来て、動かない。


本格的なインプラントは、嫌だけど、利点だけ、いただきの戦法。
用心すべきは、入れ歯と組だから、値段、吹っ掛ける先生、居ることかな?


インプラント、幾らするのか? よく聞かれる。 まず原価だ。
骨に植え込むチタン製の軸が、普及品三万、高級品五万。

その上の歯(上部構造)は、三万しない。 一本が、義歯も入れて八万以下
と、計算すれば良ろしい。


一部の先生、ダンピング。 一本十五万を知っている。 今、二十万が相場。
二十五万が相場と言う先生も居られる。

一本目を二十五万で打ち、二本目からは二十万を言う先生も居られる。

これ庭石と同じ。 値段が有って、無い。 余り安く打つと、業者に注意さ
れる。 先生、他の先生のこと、考えて下さいよ。 と言われる。


ウチは物が違う。 違いを強調して、一本四十万、それ以上で打つ先生が、
居られる。 インプラントは貧乏人には、関係ない。

金持ち相手の療法だから、安く打つより、成功率と、後のメンテナンスの
良い所を、探すのがよろしいかも。


一千万ポンと出し、これで全顎(ぜんがく)やって来れ! なんて患者様、
珍しく無いのが、この世界。

ワシも歯科医師、しとるもんだから、自分じゃ打った経験ないけど、見学は
大学時代から、もう四十件ばか、ある。

大学の先生、ウソ、余り言わんが、開業医、ベンチャラたれる向き、調子の
良い事言う向き、少なくないので、笑ってしまう。


ある先生、わたし此れまでに六百人の患者さんに、打って来ました。 失敗
は、二例だけです。 は、うそ付けいっ! だった。

ワシの見ていた三ヶ月間だけで、二件のトラブル、有ったやないか。 一件
感染、化膿。 これ抜去。 一件、骨に問題。 インプラントの前に、骨の
異変の診断、必要例。


少なくも患者、となりのチェアーで他の先生、仕事しとるような診療室では
インプラント、打ってはいかん。 この辺が、歯科医師のあかん所なんね。

ワシ、そんな沢山の先生、見たわけでは無いから、ワシの言ってる内容、狭
い狭い経験の、その中での判断に過ぎん。


しかし見とると、上手い先生、確かに居られる。 患者としては、歯科医師
の出す、うそ、いつわりの無い情報が欲しいのだが、これ難しいのだ。

ワシは歯科医師なんで、患者の側から、絶対に判らん見方が出来る事、確か
であるが、範囲、狭い。 ホントを書けば、拒否される。 やはり難しい。


少なくとも、インプラントを打つ時、横のチェアーで他の先生が、治療して
るとこ、敬遠しろ。 骨に穴明ける手術だぜ、専用の手術室で打たれたい。


実はワシ、頼まれてインプラントの応援に、行くことが、有る。
先生が打つ間、他の患者を待たせてはいかん、と言う配慮だ。

それは良いが、骨に穴明けてる横で、タービンをキュンキュン言わせるのは、
まずいよね。 思いつつタービン、キュンキュンは、これ如何に、だ!


インプラント。 患者が沢山来れば、年商何十億の、産業になる。 如何に
して患者を、集めるか? 本を出す? 講演する? テレビに出る?

見てると涙ぐましい。 有名にならな、あかん! 成功者になるか? 成れ
ないか? は、ここに有る。 歯科医師の自費出版、多いんよ。


歯科医師の世界、インプラントのお陰で、ゴツウ面白くなった。


 *     *     *


我が明海大歯学部、インプラントを打つ、もう一つの科、口腔外科には、
インプラントの業者、営業マンが一人、張り付いておる。

朝から晩まで、全ての診療日。 五十がらみ、背は低い、がっしりと胸板厚
く、喰えないツラ下げた営業マン。 立っておる。


彼の任務。 他の業者の参入、防止すること。 表向きの仕事。 インプラ
ントの注文を貰う。 寸法と型式を見て、発注する。

これだけに、年収一千万の人間一人、不要である。 なのに四六時中、張り
付いておるのは、他の業者のアタックの防御だ。


ワシが担当の教授なら、この業者に言うね。 心配すんな。 ワシの目の黒
い内。 君ん所から、独占的に買う。 他の業者に色気、見せない!

だから、あの営業マン、不要だ。 彼の年間の人件費、ボクの口座に、振り
込んで呉れ。 いやなら、別の業者に替える! とね。


これを、故山本教授(歯学部長)に言うと、先生なるほど、と笑っておられ
たが、その時すでに、死の四十日前。 ワシのアイデア、チト遅かった。

よって我が口腔外科、今でも年収一千万を払い、業者の独占を許している。


こんな経費、物の数と、しない位、インプラントは莫大な利益を、生むの
だ。

諸君がもし、インプラントの患者なら、インプラントを打つと言う事は、
口の中に、レクサスを一台、入れた、と思わな、あかん。


その心、金が掛かる! 打つのに掛かる。 維持費に掛かる。 金とヒマ、
必要になるんじゃ。 タバコは駄目だしな。 長持ちさせる苦労、払わにゃ
ならん。

デンタルIQ(あいきゅう)、上げな、いかんのだ。 さすればレクサス、
気分良いですよ。 もう安い車、乗れなくなる。


生活の質、良いに決まってるだろ! 口の中に、レクサスが有るんじゃ!


ワシ、歯科医師に成ったのが五十五歳。 歯科医師の寿命、長く無い。
仕事、出来なくなったら、インプラントのガイドブックでも、書こうかな?

思うことも有る。 だけど、ワシが歯科医師であっても、チョイ見学では、
本当のところ、判らんでえ。 この辺が、人生の難し処じゃよ。


 *     *     *


次の段では、過去問題、流通の怪、を書く。 これも無視出来ん
問題なんじゃよ。 では。



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