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く じらの 雑誌 * 食い物 裏話 第一話

< お魚の、一番美味しい食べ方は? >

(付)イワナの話 * 並びに
金正日さん、その食事では病気になる。
長生き出来ませんよ



< 魚の、本当に美味しい食べ方とは 何か? >


東京歌舞伎町。 活き魚の、高級割烹料理店。
注文あると、水から揚げて。 バタバタ暴れる奴を、その場で料理、してくれる。

ワシを招待した方。 それ見てご満悦。 一見、如何にも美味しそうだけど、
ワシ、これに反論ス。


生かして置いて、その場で料理して食べる。 のが一番美味しいなら、
魚を知り尽くしている漁師さん。 当然、さかな。 生かして置く。 しかし
だよ。 漁師さん、そうしない。 どうするか?

ワシの父は、釣りキチだった。 仲間と漁船、借り切り。 石川県。 日本海へ、
漕ぎ出すんじゃ。

潮風が、堪らんかったな。 波の荒い日は、男の日だ。 ポンポン船の響き、耳に
甦る。


父の後方で、沖を睨んでいた子供のワシも、早や六十歳だ。 父の口癖。
ワシ、さかなを、山ほど殺した。 とても天国へは行けん。 ワシが死んだら
その辺、アンジョウ(うまく)取り成しといて来れ。 合点、承知の助だ


 *      *      *


その日は漁師と一緒に、網を引いた。 カレイが、わんさか入っていた。 おおっ
形の良い鯛が、一匹混じっておる。 漁師、手網で取って、しげしげと眺めた。

何を考えたかと言うと、これを料理屋に売るか、それとも自家消費にするか?
そこを一瞬、思案したのだ。


わが父いわく。 良い鯛だなあ! しかし一匹では、なあ。 刺身にして
酒の肴じゃ。 ワハハハハッ!

これで決まり。 漁師ニンマリ。 膝まずくと、鯛の頭を指で掴み、甲板の板に
押し付けて、魚の首を、バキッと、へし折った。 即死させたのである。

カレイの方は、生簀の中。 自家消費の鯛は、即死させて、氷の中。


陸へ上がれば、氷の鯛。 すぐさま冷蔵庫の中。 一晩置いて、次の日料理する。
これが一番美味しい魚の頂き方と、我ら、体感的に励行してた。

生簀なんかに生かしとったら、むしろ不味くなる。 都会のアホは、何を考え
とるんじゃ? と言うのが、この段の、〆の言葉じゃよ。


 *      *      *


魚と言えば、我が家。 父が、釣りキチゆえ。 刺身は、大皿に山盛り。
鯉の刺身。 ぶりの刺身。 スズキに、黒鯛に、ひら目にと。 刺身は何でも
大皿に山盛りだった。

よって刺身とは、大皿に、山盛りに出るもの。 と思ってたから。 初めて料理屋
へ連れて行かれた時。 小皿の上の、三切ればかりの刺身に。

ワシ、ホンマ。 ギョッとした。 何だあ、こりゃあ? てな調子。



個人的ながら、ワシの大好物。 金ブナの刺身。 石川県と福井県の県境に、北潟
(キタガタ)が在る。 あそこで厳冬期に釣る。 寒いのなんのって。

忍耐力が、付きまっせ。 これを生簀に飼って置く。 客人が来る。 サバイて
出す(料理して出す)。 これ、堪らんね。 ついつい、酒が進んじゃう。


この時、食卓の上。 大皿に、山の如きフナの刺身。 各人の前には、刺身醤油を
入れた、小皿が一つだ。 めしの茶碗の他には、他のもの。 一切無し。

ただ、酒が有るのみ。 こうやって、語りつつ飲み。 飲みつつ喰らい。 喰らっ
ては語り。 語りては飲む。


あの頃は良かったなあ。 栄養がどうの。 健康がどうの、なんて。 考えもしな
かった。

今こんな食事、出されてみろ。 健康に良くないと、ひとくさり抜かすぜ。
ワシ、一応。 歯医者だもんなあ。 本、沢山読むから、始末、悪いよ。


たまには、院長宅で飲むだろ。 酒の肴、健康食なわけ。 栄養のバランス、満点
だあ! 消化の良さも満点だし。 酒、防腐剤なんて、一切、無添加。 これじゃ

あ、ワシも、長生きしちゃうよ。 こりゃあホンマに、たまらんち! そう言えば
昔。 タマランチさんなる方。 オリンピックの委員長、されてたな。


*      *      *


お魚は、獲(と)った瞬間に殺すのが、一番 美味い。 言うた側(そば)から
フナを生かしとくの語。 矛盾しそうだが、これは、フナだから良いんだ。

フナは、ゆったりした生活の魚。 鯛なんて、生簀(いけす)に入れてみろ。 頭
を生簀の壁に、ガンガンぶつけて、傷だらけに、なっちまう。


だから、あの水槽。 お魚が、ボーッとする薬。 入れてあるのよ。 知ってた?


*      *      *


< 防腐剤。 無添加で想い出した >


ワシが二十代の頃。 昭和四十年代。 1970年頃じゃよ。
日本酒飲むと、舌が痺れた。 これ、防腐剤。

酔うと、変な悪酔いになる。 薬品の、嫌な感じに酔うんだな。


ワシあれで、日本酒を止めた。 しかしだな。 根が飲兵衛だろ。 何か飲まな、
居れんぞなもし。(方言は、我慢されよ)

ぶどう酒、また添加物。 ウイスキー、まあ良いか。 でも、あの頃は、好きで
なかった。 今は手放せないがね。


カクテル? ワシ、アメ車とアメ酒は、嫌(きら)いなんじゃ! 仕方が無い。
また日本酒だあ。

酒の製造元さん。 頼んまっせ。 我ら、分析して飲んでるんじゃ、ないからね。
何が添加されてるか分らんなんて、そんな世の中、かなわんぞなもし。


 *      *      *


< 岩魚(イワナ)を釣る。 そして食べる >


釣りの本を、読む。 イワナ釣りの名人が、書いてある。
あれ読んだ時、嘘だと思った。

ワシ十歳、美少年の頃。 昭和三十年頃だ。 石川県は手取川(てどりがわ)の
上流。 イワナなんて、バケツ一杯、簡単に釣れた。

えさイクラ(サケのたまご)。 値段は、幾ら? では無い。


余りに簡単に釣れるので、イワナとは一体、何んちゅう魚だ? と首を傾(かし)
げたものだった。

昭和三十五年頃より、釣りブーム。 何百人もの釣り人。 どっと川に押し寄せて
魚の数より人間が多い。


こうなると、ワシみたいなネンネには、もう釣れない。
ヤッパ名人のお出ましだ。 本当、一匹も釣れないんだよ。 手取川も今は、放流
だかんね。

放流の次の日に行くとね。 柳の葉っぱ。 みたいなイワナが、バケツ一杯釣れて、
地元の村人。 ため息を付く。


 *      *      *


イワナは、春の四月。 カスカスの身だ。 焼いても美味くない。 無理ないよ。
長い冬。 我慢したんだもの。 やっとの思い。 春だ春だと元気出して、

さあ、食べるぞ! と思った途端。 釣られたんじゃあタマランよ。
てな事考えたら、イワナ釣るの、止めなアカン。


秋のイワナ。 婚姻色で美しい。 産卵の時だ。 人生で一番良い時だ。
テナ事思うと又、釣れなくなる。


ワシ、上高地。 槍沢(やりさわ)の奥だぜ。 槍沢ヒュッテの直ぐ手前。 イワ
ナ、釣った事ある。

あそこ国立公園内。 釣り禁止。 だからこそ、一遍、釣りたかったのだ。
見張りを立てて、竿伸ばして、イワナ釣り。


餌が川面に付くや否や。 イワナでググーッだ! あっと言う間に、五匹、釣れた。
その時、人が来る! の声。 さっと身を伏せ、竿を仕舞う。

ドキドキしたなあ。 思わず行きそうになったよ。 槍沢ヒュッテの前で、塩焼き
にして喰った。

罪の意識。 これが又、最高の調味料なんじゃよ! 格別の味だった。


そこへ、ワシの鉄工所だ。 アルバイトに来た学生が、徳島大の山岳部。
真冬に、穂高へ登るよな猛者だった。 こいつが言うのよ。

心配無いですよ。 ボクら冬。 あそこの、横尾山荘に泊まった時。 山荘の管理
人。 ちょっと待て言うて、釣竿持って出て。 ものの三十分。


イワナ。 十匹ばか持って帰って。 料理して食わしてくれました。
この時、ワシは言ったね。  横尾山荘の管理人ちゅうたら

国立公園でイワナ釣るような、不届き者を。 見張るのが、仕事やないか。
その管理人がイワナ釣って、どないすんねん!


 *      *      *


ワシが初めて、上高地へ行った時だった。 十四歳の夏である。 昭和三十七年。
あの頃の上高地。 ホンマに静かだった。

島々(しまじま)から上高地まで。 砂利道だったんだぜ。 登山客以外、居な
かった。


それが、今じゃあ。 学生の修学旅行。 ワンサカ居る。 女子供が、ウジャウ
ジャだ。

明神池。 何時から有料になったんじゃい? あれじゃあ、原宿と変わらんよ。
上高地。 ワシはもう、十七回ばか、行ったかな?

今は何も見ず、ひたすら通り過ぎるだけ、にしとる。
河童橋からの、穂高の雄姿。 少しも変わらんのが、救いじゃよ。


 *      *      *


< 金正日さん。 その食事では、長生きせんよ。 病気になる >


日本人の寿し職人。 藤本健二さん。 呼ばれて北朝鮮へ行った。
金正日さんの為に、腕にヨリを掛けて極上の寿し。 握ってきた。

これは別段かまわんのだが。 そもそも寿しなる物。 ありゃあ、舌を楽しませる
物ぞ。 偶(たま)に食う物ぞ。


本(参考レベル) *  金正日の料理人  * (藤本健二:扶桑社)

むしろ必読書   *  韓国人から見た北朝鮮  * (呉善花:PHP)


寿しを常食にしてはいかん。 あんな物、毎日喰って、いい気になってはイカン物
ぞ。 寿し、美味しくする為に、砂糖を使う。 米、強く精米して食感を立てる。

美味しい! と、感嘆したくなるよな食べ物。 皆んなミネラルを除去した物。
寿し。 だけでは無い。 フランス料理。 また良くない。


諸君ら、本当の京御膳。 食べた事あるか? あれ素朴よ。 土臭い。 すぐには
良さ。 判らんのじゃ。 じわっーと、十年して良さ判る。

本当の京御膳。 最高の健康食。 大根なら全部を喰う。
魚。 頭から尻尾まで、残さない。


ご飯。 玄米を使いたい。 とにかく、ダサい味がホントの味だ。 美味しいは
時として、味覚の虚偽を突くものかも。

例えば、我が明海大。 歯学部の学生食堂。 美味しい! と言わせる為に、
砂糖。 ドバーッと入れる。


漂白した砂糖。 身体に良いか?悪いか? 寿しごはんにも、砂糖を入れる。
寿しのネタ、魚の美味しいとこだけ。 他は捨てる。

あんな物を主食にすれば、血管が硬化する。 糖尿病は亢進する。 ミネラルに乏
しいから、身体のスミズミが軋んで来る。


まして金正日さん。 ストレスフルな毎日だ。 寿しなんて週末一回。
美味しい! と、堪能してれば良いのだ。

人間の舌、それほど論理的では無い。 美味ばかりの追求は、人生をあやまる。
金正日さん。 毎日の食卓は、玄米を主食に。 野菜、果物、海草、肉、魚、

ビタミン、ミネラルを多く摂る方針で行かないと、心臓、血管、肝臓、腎臓が劣化
します。


動脈硬化、糖尿病になります。 あんな食事、ついには癌を招くのです。 つまら
ん! じゃあ有りませんかっ!

食事のミス。 我らも、止めましょう!


 *      *      *


< 寿命は、手相より、免疫力の測定で >


個人の寿命は、各人の免疫力に限定される。
八十歳免疫の人。 八十歳以上生きない。

短縮は簡単。 食事のミスは、短縮の王者。 世の中、短縮材料が一杯だ。
われらは毎日。 免疫寿命を、一杯に生きる挑戦。 しとる様なものだ。


長寿は別に、義務ではない。 ワシの父なんぞは、ユル-ブリンナーのフアンだった
関係で。 彼が、肺ガンで死んだものだから、自分も肺がんに成ろう! と決意し
て、

死ぬまで煙草吸ったが失敗し。 やっとなれた結腸がんは、医者がミスで治してし
まい。 最後、事故で。 やっとこさ、死ぬ事が出来た。



 *      *      *


歯学部の医療倫理。 やたらと死を論ずる。

尊厳死か何か知らんが、ワシの最後は。 死にとうない! 死にとうない! 言う
て。 一番、見っとも無く死んでやろうと。 心に決めてまんねん。


かっこ良く死のうと思うから、心配しまんねん。
見っとも無く死んでやるぞ! と決めて掛かれば。 気が、楽でござんす。

食い物の話が、医療倫理でオチになるなんて、流石だね。 では又、次で。



*      *      *



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