*  自分史 製造業系 ( 五十歳までのワシ。 鉄工所三十二年間の想ひ出 )  *   < kujila-books ホームへ帰る >

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第 1 章  *  2 / 11 


キャタピラージャパン様、

< おたくの DNA は、三菱重工なのだッ




石川県の小松市に住み、(株)コマツの仕事をしつつ、
同時平行に三菱キャタピラーの仕事もして見ると、
両社の違いの余りの大きさに驚きて、石川啄木
じゃあないが、ワシは三歩、歩めなかったぞ。

それ程、違ってたのだ。
何がそれ程違ってたのか? をこの段に書く。


*     *     *




投資の本にあった。
三菱( の株式 ) を買う事は、日本を買う事だと。

このキャッチコピーは、表彰ものだ。
戦前ほどでもないが、三菱には規模ばかりじゃない。 底力がある。 三菱は、
やっぱ日本そのものかも、知れぬ。


だけど影の部分もある。 三菱特有の病理現象が付きまとう。
いわゆる東大病。 赤門症候群。 そこから派生する半官庁のような気分。

コスト高。 人件費高。 三菱特有の同族意識も、上手く 処理すれば強力な
武器。 下手をすれば、またもやコスト上昇要因。 身動きが取れなく なる。

東大卒は、何かと金が掛かるのだ。



三菱やぁ 〜 小石飛ばせば 東大卒に当る。 イテテッ


 *       *       *


コマツの社員と話してると、こんな事を言う。

三菱重工を中途退社する者はね、人間関係に恨みを抱いて去って行く。
うちのコマツだとね。 これが、こき使われた恨みになるんだ。

こき使われた事に恨みを抱いて、コマツを去って行く。 なるほど、ねええ。
三菱とコマツの企業風土の差、感ずるよ。



 
< 三菱の下半身問題の 2 >


ワシの鉄工所が、キャタピラー三菱の孫請けだったのは、1984年までである。
二十五年ばかり経ったわけだ。 早いもんだよ。

ブレイカーの機械加工は、当然他社に移管したから、イカサマがどうなったか?
不明である。


あのイカサマ溶接が他社でも持続出来たか? 聞きもせぬし話もせぬ。
実は他にも、いけない加工があったのだ。 それは、サウジアラビヤ向けの

大型のブレイカーだった。 ブレイカーとは、クサビをガンガンと打ち付けて
コンクリートなんかを破壊して行くものだと、前に書いた。



だけどサウジ向けのブレイカーは、油圧の駆動部が、人間の背丈ほどあって、
重さが二百キロを越えたから、こんなのを取り付けるパワーショベル。

とてつもなく 大型だ。 アームなんかも巨大である。 ドンドンとクサビを
打ち付けるから、衝撃力も甚大だ。 そこで三菱の技術陣。


軸受けに、ブッシュを付加した。 焼入れして強度を出したのだ。
機械加工のワシ、仕上げたブッシュを焼き入れ屋へ持って行った。

専門的な熱処理を、お願いしてたのだ。 でも考えてみれば、このブッシュを
圧入する、つば付きのボスの外周の開先は( イカサマで ) 加工してないしな。


溶接屋は、いつもの、やっつけ溶接だ。 一回で全周を溶接しちまうから、変形
が物凄い。 歪(ゆが)んで付いてしまう。 これを向かい合わせに組み立て

ると、ボスが歪んで仕舞うから、ピンが通らねえんだ。 溶接屋、リューターで
当りを研 ( けず ) る。 焼入れが削られてしまう。 熱処理の意味も消える。


こんな、飛んでもねえ品物を納めてたんだよ。 ワシ、余りの馬鹿馬鹿しさに、 焼入れを止めてしまった。 コークス炉で軽く 焼いて、油へドブン

如何にも熱処理しました。 そんな色を付けて圧入しといた。 そして早いだけ
が取り得(え)の、イカサマ溶接だ。 手動のリューターで研(けず)り拡げた

軸受けなんて、軸受けと言えるかッ 真円に成って無い。 あんなもの、
衝撃で、たちまちガタガタに成る。



なのに三菱キャタピラー、文句言わない。 むしろ親会社( 一次下請け )の担
当者、見かねて。 これ、あんましじゃない? 何とか成らない?

注意した。 この担当者、ワシの中学時代の同級生だ。 陸上の選手だった。
大変なスポーツマンだった。 工業高校から (株) 北菱 へ這入ったのだ。



これに対して、溶接の新木隆夫社長。 こんな安い加工単価では、これが精一杯
だッ 品質を上げたいなら単価を上げて呉れッ

それでお仕舞い。 後は別に何も無し。 こうなると ( 株 ) 北菱の品質感覚
も問題に成る。 加工単価が安いから、イカサマでも良い。

こんな弁解、(株) コマツでは、通用しない。 三菱キャタピラー系では、
堂々と、まかり通る。



こんな馬鹿気た製品が、船積みされて、サウジアラビヤへ行ったんだ。
日本の恥、丸出しではないか?

こうなるとサウジも、三菱だからと言うて、油断しててはいけない。



 *       *       *



こんな調子だから、下請けの仕事を見てると、(株)コマツへ出す製品と、
三菱キャタピラーへ出す製品の感覚が、違うのだ。

コマツへ出す製品、過剰品質。 汚れを丁寧に拭いて納品する。 三菱キャタ
ピラー向け、ゴミも取らずに溶接して仕舞う。 こんな製品、


傾けると、ゴミが低い方へ流れる、サァ ー ッ と言う音が聞こえる。 最近は、
昔ほど酷く ないが、それでも差は有る。 気分的な差がある。

下請けの親父 ( おやじ ) 連中、三菱は何も言わんからね。 これで良いのだ。
と成る。



その辺が、三菱の DNA なんです。 三菱は厳しく してる積りでしょうが、
(株)コマツと同時平行的に仕事する下請けには、

一周遅れ、十年遅れに感じられる。 大体ねえ 〜 、三菱キャタピラーの検査係
ぽっちゃりした良家のボクちゃんタイプばかり、なんすよ。

好感は持てるが、仕事師では無い。 三菱キャタピラーは、人間関係を最優
先に、新入社員を選考するから、こう成るのだろう。



片や (株)コマツの検査係、痩せ気味で目付き悪く、冗談言っても笑わない。
如何にも、人の粗 ( あら ) を、ほじく って、

人生の楽しみにしてる様な、やな連中ばかしだった。



三菱が抜けて、キャタピラージャパンに成っても、あんなトロイ検査してたら
駄目だぜ。 こんな風に、三菱重工の DNA には問題が多いのだ。

三菱時代の気分が、そのままなら、キャタピラージャパンも早晩、ぼろ儲けの
先でも見付けないと、企業が立ち行かなく なる。



  *       *       *



三菱のぼろ儲けを、一つだけ書く。 テリー伊藤著 < お笑い、大蔵省極秘
情報 > から引用。 大蔵省のエリートいわく。

三菱重工が、どの位の利益を得ているか? FSX ( 次期支援戦闘機 )
が有るでしょ。


アメリカの似たような戦闘機 ( F - 16 ) は、一機20億円です。 それ
が三菱重工製、一機140億ですよ。

10機なら 1400億です。 三菱重工は、ぼろ儲けでしょ?



キャタピラージャパンさんも、こんな事、する積りか?



  *       *       *



< 三菱の検査係はフレンドリーだ。 コマツは、意地悪じいさん。>


小松に居て、(株)コマツの下請け連中と話してると、 オレ、コマツに、恨み
がある ・・・ と言う者。 一人や二人では無い。

単価でコテンパンに叩かれ、品質でぎゅうぎゅうに締められ。 挙句( あげく )
納期でガミガミ言われたら、誰でも恨みたく 成る。


だが(株) コマツの下請けの全てが、これでは無い。 人間の世界だ。 どこに
でも裏道は有る。 それはこの段の、先で書く。

だが大むねは、(株) コマツの過酷に近い下請け政策に、呻吟してる。



  *       *       *



見てると検査係。 三菱とコマツ。 天と地なんよ。 体形と気分の違いは、
上に書いた。 以下は、行動の違いである。


三菱キャタピラーは、明石に在る。 小松へは、特急でお越しになる。 または
高級乗用車。

事務室の応接セットに案内され、コーヒーを楽しみながら、四方山のお話。
笑い声など出て、良い雰囲気だ。


お昼前に、やっと工場を案内され、型通りにご視察、遊ばされて。 お昼は当然、
料亭かレストランである。

海の幸、山の幸に舌鼓(したづつみ)など打って頂き、最後に、中身の怪しげな
封筒など、背広のポケットに入れて貰った三菱キャタピラーの検査係様。



明石工場へお帰りだあな。 これが東大出の役職者ともなると、午後はゴルフ場
で、お汗(あせ)を掻いて頂く。

その夜は北陸温泉郷で、湯女の深情け。 美味美酒に堪能など、して頂いて、お
帰りには、これまた十万円のお小使い。



この話、北菱の接待係から、直接聞いたものだ。 彼いわく、あいつ等さあ、
ゴルフ場の記帳。 横文字だぜ。 名前、英語でチャラチャラとサインすんのよ。

ワッハッハッハッ だわね。



  *       *       *



これがコマツだと、地獄となる。 検査係、予告なく、顔を出す。 工場に
ビリビリと緊張が走る。


納品待ちの完成品から、勝手に三つほど引きずり出して、持参のドリルで
ガリガリと、無遠慮に穴を明ける。 そこを覗いて見る。


よっしゃ、合格ッ この穴、溶接で埋めといてく れ だってよ。
担当者、青ざめた顔で立ち尽くす。 怒りでこぶしが、ブルブルと震える。

これは創作ではない。 コマツの検査、真実これなのだ。 これじゃあ、うらみ
抱(いだ)く よな。



 *       *       *



だから小松に居て、三菱キャタピラーとコマツの仕事。 平行にしてると、その
余りの落差に、神経が付いて行かない。

もっとも付いて行かなかったのは、ワシ一人かも知れんが ・・・ ワシみたい
誰も出来ない旋盤加工が、出来るよな人間。


能力が偏(かたよ)り過ぎて、駄目なのだ。 天才タイプとは変人奇人の別名
だ。 いわゆる依怙地(えこじ)な人間。 そうだ、

三菱の品質だった。 これを見れば三菱の DNA が、品質を阻害してる事、明白
だろう。 キャタピラージャパン様。 お判りかな? ワシの日本語、読めま


すかな? きつい事、書いとりまっせ。 この日本語、英語に直しといて
日本人の部下に、言わなあかんでえ。

キャタピラーが、まんまと手に入れた三菱の建機部門。 とんでもねえ代物
( しろもの )だったかもよ ・・・



 *       *       *



キャタピラージャパンが品質と原価で、コマツを抜くのは、簡単なようで、恐ろ
しい難事だと判るでしょう。 最大の障害は、三菱の DNA だ。

三菱の企業風土、社員の精神風土が、原価の低減を阻害してる。 これの
改革は、難 ( むず ) かしい。 国民性を変える困難に、

匹敵する程、難しい。 恐らく変わらんでしょ。



冗談抜きで、三菱キャタピラーの遺伝子治療が必要に思える。 キャタピラー様、
こんな業病の三菱を手に入れた戦略。

本当に正しかったのか? 考えてしまう。 (株)コマツか、日立建機と合併し
た方が、良かったのではないか? ・・・ と思える。



相手が三菱じゃあ、残すところ、カルロスゴーンみたいな、剛腕 ( ごうわん )
の経営者でも探さなきゃ、何も出来ない。

三菱キャタピラーには、東大閥の絡 ( から ) む、複雑で独特の人間関係が、
支配してる。


2010年時点のキャタピラージャパンは、三菱キャタピラー以来の、人間関係の
問題を、避けて通ってる気配だ。

するとキャタピラージャパンの社風は、三菱の建機部門以来の風が、今も吹いて
るってえ事に成る。



すると下請けのイカサマ溶接も、相変わらずってえ事だ。 コマツや日立建機に
十年遅れで付いてるってえ事だ。

こんな三菱を効果的に機能させるには、カラヤン級の指揮者が必要かも。
カラヤンは、そうそう居ない。 三菱には東大出が山ほど居ても、


三菱の巨大な組織を活性化できる才能を持つ東大卒は、得難い。 組織を
沈滞させる名人なら、ゴロゴロ居るのだが。

三菱の一部を分捕ったキャタピラー様。 彼らに才能の有る事は確かだが、
それを効果的に発揮させるには、人間関係を基調にした、

企業風土の刷新が必要なのだ。



それを、せずに、利益を求めると、いけない力学が必要になる。 三菱に
対する非難は、全て、その、いけない力学に対するもの、じゃないのか?

最後にひとつ、戦争を起すのも良いが、負ける様な戦争は、起すなよッ
アメリカの産軍複合体が、正義の味方面 ( づら ) 出来るのは、


勝ってるからだぜ。 ベトナム戦は、負けた。 よって酷い目に会った。
戦争は、しちゃいけないが、

する時は、しっかり勝てよ てな具合に、三菱は戦争に近いのだな。
しかしだよ。


朝鮮戦争で、一番儲けたのは、三菱じゃ無い。 コマツなんかが、もっとゴッソ
リ、儲けた。

三菱は、トロいんよ。 それでいて、一番文句言われるのが、三菱だ。 一番
糞味噌に叩かれるのが、いつも三菱だ。



キャタピラージャパン様。 三菱の建機部門、分捕ったは良いが、その精神風土
を何とかしないと、

損しまっせ。 ホンマに ・・・



 *       *       *



さてさて、

あなた様がもし、土建屋さんで、仕事にブレイカーをお使いなら、色んな
メーカーの製品を、使い比べされる事を、強く お勧めします。

使い比べるとね。 製品の価格、仕事のし易すさと耐久性。 故障した時の
修理費用まで。 いやでも順位が出てしまう。



一社だけ使ってると、これが判らない。 おかしな製品も、こんな物なんだと、
思ってしまう。 こんな物なんだと思って良いのは自分の女房だけ。

仕事の道具は競争させて、シビアーに行かないとね。 あのイカサマ溶接も、
三菱のルートで市場に流れて、何とも無かったからね。


あんなの使ってた奴は、馬鹿だよ。



 *       *       *



三菱の底力、キリンビールを見れば判る。 キリンも三菱系だ。
三菱は日本その物、なんだから、高コスト体質では、国民が困る。

高コスト体質を、政治力で延命させるのが、最も良く ない。 しかも最近の
東大卒、受験予備校のテクニック秀才ばかしだ。

こんな東大卒のごろごろしてる三菱、要注意企業である。



昔みたい、手の付けられないガキ大将。 ある日突然一念発起して、東大へ
行った。 なんてえのは、もう居ないからね。 東大生の90%は、受験勉強

一筋の、勉強おたく だ。


そんな人間、あたまでっかちで、実業家向きでない。
キャタピラージャパン様。 三菱と組んだのは、ひょっとして、スカタンだった

かもよ? 見込み違いだったかもよ。 用心してよ



 *       *       *



次の段では、あの恐ろしいコマツの下請けが、こんなイカサマをしてたと言う。
ワシがこの目で見た、事実談を書いてみる。

人間てえ奴は、物凄い事をするもんだよ。 ワシは、三菱のイカサマに加担した
以外、イカサマとは縁の無い、きれいな身体だった。



イカサマしなかったのは、正義感からじゃあ無い。 単に人間が小(こま)かっ
ただけだ。

大それた事する程、金玉が大きく なかっただけ。 不正行為をするには、
それなりの肝っ玉が、必要だからさ。

ミスすると、クヨクヨと四十年も記憶してる人間。 イカサマは無理だよ。



では次段へ行く。




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三菱を更に研究したい向きは、ここから這入ってくれ。 井戸みたいな構造に
してある。 メインルートから外れる。 這入った所から出る以外、道は無い。


           → → → → → → 
(三菱を更に研究する)



一般の方は、メインルートをたどってくれ。

次の段は、コマツにも有る、下請けのイカサマ行為だ。





*       *       *


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