* 自分史 製造業系 ( 五十歳までのワシ。 鉄工所三十二年間の想ひ出 ) *
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第 1 章 * 11 / 11 < 日本はバックリベート列島だ! > 企業内企業家、ゴキブリ編。 * 年齢を無視すれば、 この八倍は書けちゃうぞ! 日本は、バックリベート列島だッ! だが収容所列島よりは、マシである。 * * * |
< ゴキブリ扱いに抗議するなかれ。企業内企業家諸君ッ! > 名古屋には築炉( ちく ろ )メーカーが数社ある。 これは、その一社。 T 産機としておこう。 この方、B 氏。 お元気なれば平成二十一年(2009年)現在、八十七歳かな? 痩せ型の、颯爽(さっそう)たる男でね。 ヤーさん風。 肩で風の歩き方。 ご住所が三重県四日市なんで、月の半分は会社へ出ない。 自宅から直接、ユーザーを巡( めぐ )る。 三重県の鈴鹿市はホンダの城下町。 自動部品は塗装がある。 焼き付け炉の需要がある。 この炉を作るのが、築炉メーカーだ。 彼、セールスエンジニア。 注文を 取り、自分で設計して、会社で作らせて、納品する。 ひとたび塗装ラインが入れば、メンテだ、改良だと、仕事がつづく。 重なったり すると、やたら忙しい。 一度に全部、相手出来ない。 その工事。 そっちで業者探して、やらせて呉れ。 本社工場は仕事で一杯だ。 てんで、仲間に声掛けて、やって貰う。 これが高( こう )づるのだな。 本社に出すべき仕事まで、仲間にやらせる。 A 産機の看板で集めた仕事を、 仲間内(うち)で処理する。 会社へ出せば、成績にはなる。 ボーナスが増額 される。 でもさ。 直接、仲間の会社へ降ろせば、金額の10%とか20%が、現金で 貰える。 成績を取るか、現金にするか? どっちが良い? どっちが得 ( とく ) する? 考えるわなあ。 これも度が過ぎると、会社に反逆と成る。 でも、だんだんエス カレートするのよ。 謝礼が、現金で入るからね。 彼、かなりエゲツかった。 看板、飽く まで T 産機である。 見てて、際どかっ た。 紙一重で、首か? こそ泥か? に成るとこだった。 * * * 彼、面白い方でね。 我らを指して、馬の骨、馬の骨。 言いまんのや。 ご自身 は四日市の旧歓楽街の、芸者の子なのによ。 彼の実父。 名古屋の経済界の大物。 名前を書けば、諸君らも知ってる大物だ。 伝記もある有名人。 四日市へ来た時、若き芸者を見染めたわけだ。 すぐ に身受 け。 みうけ、だよ。 みうけって何あに? 辞書で調べて呉れッ! つまり、お金を出して、自分のオンリーにしたのさ。 これが彼の、お母様。 これを根拠に彼、オレは、お前等とは種 ( たね ) が違う。 言いまんのや。 これ、人に自慢できる事かよ? 要するに、妾(めかけ)の子じゃないかッ! そんなご立派な、お血筋の方が、会社の仕事、ネコババすんなよッ! 彼もまた、見事なる企業内企業家、でしたな。 お小使い、本給と変わらない んだもの。 こうなると我ら、生き方、考えた直した方が良いかも知れぬ。 * * * < 仕事を、君の会社に出す ・・・ に、喜んではいけない! > ワシの工場は石川県の小松だった。 三十二年間だ。 色んな事が有った。 親会社の担当者が来て、この仕事を君の会社に出す。 君も男なら、バーンと投資して、設備を作れッ! この間、二度も言わ れた。 二度とも断 ( ことわ ) った。 いずれも一億円以上の投資だ。 中身が問題でね、機械( マシニングセン ター )は、三千万である。 これは判る。 問題は、装着する冶具、四千万なんよ。 用意する工具が、さらに一千万。 機械が重いから、基礎工事が必要で、五百万。 冶具の四千万のいやらしさ。 判るかな? 親会社、自分では何もしない。 二千万取って、残りの二千万で外注する。 金沢辺の専門会社へ、丸投げだ。 利益の上乗せがでかいから高いのだ。 * * * 木造の工場では、天井走行クレーンが付かない。 鉄骨に建て替えて、二千万。 合計で一億円強。 いやらしいのは親会社の担当者だ。 業者を指定する。 機械はこの会社から。 冶具はウチ会社の、エンジニアリング部門で。 基礎工事がここで、鉄骨工事は、この会社にと、命令口調だ。 仕事を発注する ので、当然みたい雰囲気で物を言う。 意に逆らえば、発注の取り消しだ。 ご無理、ご尤(もっと)も。 言い成りだ。 こんな仕事を受注すれば ・・・ だよ。 親会社の男めかけに、されちまう。 男めかけ、ですよッ! 尻(けつ)を出せッ! 言われれば、パンツ脱がな、いかんのやッ! 手向かいなんて、してみろ。 君の所とは、取引を止めるッ! この一言で、死刑を宣告されるんじゃ! 男めかけ、言うたら、そんな境遇なんよ。 解る? * * * さらにだ。 担当者、機械を売るだろ。 一台当り五十万〜七十万の礼金が、 キックバックされるんや。 冶具(ジグ)を四千万で受注するだろ。 親会社は二千万の利益を取り、加工 は金沢の専門会社へ、丸投げよ。 出来上がった冶具には、自分所(とこ)のネームプレート、仰々しく張ってね。 図面も全て、自社のネーム入り。 知らない人が見たら、親会社が製造したと勘違い、しまんがな。 しかも だよ。 さらに許せん事が有る。 1990年頃じゃ。 バブルの真っ只中。 この同じ提案を、下請けの二社に してんのよ。 仕事はそんな沢山無い。 なのに、二社に提案だ。 機械は二台、売れる。 マージンも二倍だ。 冶具も同じものが二つだろ。 ボロイと言うか、こすいと言うか。 汚ねえ、やり方と思わんか? ワシが受けなかったので、当ては外れたでしょうが、もう一社は、投資しました。 一億円だぜ。 安く ない。 機械が来て冶具が出来た頃、バブルお仕舞い。 どうして呉れるんや? * * * その機械、十年間、新聞紙が掛ってた。 そこの社長は農家である。 田んぼが、機械に変わっただけ。 借金無いから、夜逃げ、しなくて良いけど。 こんな事例。 どう思う? 一億円。 十年間、冬眠よ。 こんな具合に、下請けに仕事を出す時、気の利いた担当者は、機械メーカーに 渡りを付けて、お小使い稼ぎ、してまんのや。 言っときますけどね。 設備投資を断ると、親会社の仕事。 全部、引き上げ です。 罰せられるのです。 投資を強要されるのです。 いやだ、いやだと言うのを、強姦されるのです。 昨日(きのう)までの仕事。 きれいに、パーですからね。 これを解って 欲しい。 だから、従業員が居たりすると、男めかけに成らざるを得ぬ場合があります。 ここでこそ、寝技の力が有るか? 無いか? が、問題です。 ワシなんて、そんなもの。 からきし無し。 でもね。 無く て良かった。 ちょっとでも色気が有れば、 今頃、借金で、ヒーヒー言ってる。 この道での成功者。 S 鉄工を筆頭に、二十社を出ない。 S 鉄工だって、 バブルで、こけた、や、ないか? S 鉄工の創業社長の、あの豪腕をしても、あれ、だからね。 今、実質的に 経営しとる、営業の A 氏の、寝技の妙技を見よ! だよ。 ワシに、あんな才能、無いからね。 誰にも出来ない旋盤加工が出来るな んて、この際、無関係だ。 ここで必要なのは、 楽しく飲ます技術。 ゴルフで(上品に)よいしょ! 出来る腕。 お小使いを、上手く握らす能力。 一緒に女と遊んで、穴(あな)兄弟と 成る、おおらかさこそ。 必要な才能です。 そう言う才能の方が、付加価値を出します。 堺屋 太一の知価革命です。 まったく、ですよ。 本当にまったく、ですよッ! * * * < 情報は、あたい千金。> 小松市には、不思議な才能が、居られましてな。 意味不明の土地を買われる。 誰にも理由が判らない。 三年しますとね。 そこへ市が、県が、国が、道路を作りますんや。 な、なあるほど! 凡人はそこで、やっと、意味が解けますんや。 手遅れですけど。 こんな情報、価値があります。 恐らく、情報源の方にも、利益の一部が 還流してると、思いますが。 * * * ああ、全国の、そして、全世界の企業内企業家。 イカサマの方々よッ! 本日も、せ、晴天のようですッ! ご機嫌よろしゅうにッ! * * * さて、この章も、やっとこさ、お仕舞いです。 次の章では、我が久治良家の、 遺産相続戦争と題し。 久治良家の宿命を論じます。 では、次章にて。 |
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