*  自分史 製造業系 ( 五十歳までのワシ。 鉄工所三十二年間の想ひ出 )  *   < kujila-books ホームへ帰る >

< この本の ホームへ帰る >

< 前のページへ帰る >

< 次のページへ進む >



第 4 章  *  おお我が小松市よ

3 / 4 


<古田暉彦 元北陸電力副社長の少年時代>





カエルやヘビやウサギや鷹や鷲が、日本の野山から激減した。
それよりもっと嘆くべきは、子供の世界の消滅でこそあれ。

子供( だけ )の世界が日本から消えたので、
そこを生息場所のガキ大将も、一緒に絶滅。今や日本人、
子供だけの、あの世界を、見もせず聞きもせず大人に成る。

これ日本史開闢(かいびゃく)以来の大問題なのに、誰も騒がぬ。
認識もせぬ。
僅か一世代で日本が、かくも変質してるのに、だッ

本物のガキ大将を、君は見た事あるか? マンガのじゃ無いぞ。
ワシここに、日本の絶滅種、ガキ大将の典型例を示しつつ
新しい世代との比較を通じ、考察を加えんと思う。

古田暉彦氏なる正真正銘のガキ大将上がりに登場願い、
ガキ大将の居た、あの子供の世界の記録を、書き残す。
( 後半、この文に対する社会学の方と 伊田先生の論評を付加す。)

最後、古田氏が社長に成れなかった理由を、考察す。




*     *     *





< 古田氏の実家はワシの工場から七十メートルだッ >


古田暉彦( あきひこ )をインターネットで検索すれば、元北陸電力の
副社長を手始めに、どっと出る。

経済同友会富山の特別顧問が有る。 サッカーのカターレ富山・代表取
締役でもある。

このカターレ富山で検索すれば、古田暉彦氏のインタビュー記事、写真と
共に現れる。



その他、現職や前職などは、富山市教育委員長、富山ユネスコ会長。 北
陸銀行と富山エフエム放送は、監査役であろうか。

キリが無いので割愛す。 要するに古田氏、各界に幅広い人脈を持つ、
富山県の名士でこそある。 ちゅうこった( と言う事である )。



  *       *       *



古田暉彦氏、昭和十年( 1938年 )生まれ。 これを書いてる今、
七十三歳であられる。 つまりワシらの一回り上だ。

ワシらの世代にも、子供の世界は存在した。 ガキ大将も居た。 だけど
我らの次の世代、子供の世界は急速にあいまい化した。



原因は、色々有る。 自動車の普及も大きい。 道路が遊び場で無く
なった。 ワシら、駅前大通りで、独楽回し してた。

お寺の境内からも、追い出された。 ワシらが子供の頃のお寺、子供の
絶好の遊び場だった。



今や、お寺の境内、有料駐車場。 かって子供が自由に往来してた本堂
の床下、金網が張られて、猫の子一匹、入れない。

そもそも現代のお寺、敷地の周囲、収容所めいたコンクリの壁だ。
ガラスの破片を植えた、高い壁に囲まれとる。



  *       *       *



最近の街、歩いてて、子供だけの集団、まず見ない。 子供は必ず親と
行動してる。

ワシらの頃は親なんて、意識の外だった。 仲間同士の遊びに夢中
だった。



親と一緒にどこかへ行くなんて、不幸でも有った時くらい。
だから父親に、今度の日曜日、遊園地にでも行こうか?

なんて言われると、我ら、青く成った。 あの頃、学校で行く映画、
お父さん、子供連れて遊園地。

遊び疲れた、その最後、お母さんの死が告げられる。






かあちゃん、死んじゃ嫌だッ
かあちゃん、死んじゃ嫌だッ




この場面で我ら、泣かにゃいかん。 泣かないと、先生に殴られる。
ワシ、殴られた。

ここで泣かない奴は、人間じゃ無いッ
って、叱られるんよ。



だから親に、今度の日曜日、遊園地でも行こうか ・ ・ ・ なんて
言われると、 我ら青く成った。

かあちゃん死ぬの?  ってわけよ。



  *       *       *



たった四十年前の日本、子供は子供同士で忙しく、親との関係など、
考えもしなかった。 意識の中から親が消えていた。

現在の日本の親子関係と比較すると、別の国の文化かと思う。



  *       *       *



古田氏の少年時代の武勇伝、語って呉れたのは古田氏と一緒に暴れ回っ
てた ご近所の散髪屋さんである。

この方、古田氏の少年時代の子分か? 遊び仲間には違い無し。



物語を始める前、登場人物を紹介す。

まずワシの工場、小松市の郊外に在った。 古田氏の実家とは
七十メートルしか離れておらぬ。 町内同士。

くだんの散髪屋さん、そのチョット先。 そして、やがて出る 新田君
(仮名)は、ワシの工場のお隣さんであった。

工場で仕事してると、新田君のお母さんの姿、見えたりした。



この新田君、ワシが二十三歳の時の生まれだから、二回り強、若い。
古田氏から見れば、三回り、三十歳若い。

新田君の成長史、近所なんで、ワシ、ほぼ観察した。 新田君、古田氏
と同じく小松高校から中央大学の法科である。



卒業後、あとを追う様に、エリートコースにて、北陸電力へ入社した。
つまり大学が同じで学部も同じ。 その上さらに、町内まで同じ。

お陰で近所のお母さん連から、新田さんちの息子さん。 古田さんの引き
で、出世が凄く早いと、何度も何度も聞かされた。



さも有りなんと思う。 新田君、可愛がられるタイプではある。 これ悪
い意味では無い。

パナソニックの松下幸之助いわく、( 幸 )運も実力の内。



  *       *       *



新田君の成長過程や、ご両親の人となり、ワシ近所だから熟知しとる。
それと古田暉彦( あきひこ )氏の成長過程を比較すると、

誠に誠に、現今の日本の、少年時代の体験の物凄い差に、驚嘆する。



よって、この二人を比較して書けば、日本人の少年時代の過ごし方の変化
の、記述とも成る。

以下、試みんと欲っす。



  *       *       *



< 古田氏の仲間だった散髪屋さんの証言。>


わしらが子供の頃、ターザンごっこが馬鹿流行( はやり )でな。 縄掛
けて、木から木へ奇声を上げて飛び移り、遊びまくってた。

あの頃を思い出すと、遊び足りなかったの後悔、全く無し。 極限まで
遊んだ気がする。



古田かぁぁ 〜 、懐かしい名だ。 わしらのグループのリーダーだった。
どんな所へ行くにも、あいつが先頭だった。

かっこ良かったよ。 わしら町内の子供、十五名ばかしを引き連れて、
遊びまくってたものだ。



あいつが居ないと遊びに成らない。 気合が入らんと言うのかな。
あいつが先頭で遊ぶと、

何か、スカッとした爽快感が有ってな。 緊張の度合いが全く違った。
もう、わしら、あいつと心ひとつに、遊んでたものだ。



  *       *       *



時々隣り村の連中と会うのよ。 すると古田、ス 〜 ッ とわしらの
前へ出て、

向うのボスと渡り合うのさ。 後ろに居るわれら、金玉が縮んだよ。
全身が、ゾクゾクとしたもんだ。

下手すりゃ殴り合いの、喧嘩だからな。



ああ言う場面では古田、頼りがいが有った。 東映の、ヤクザ映画の
親分同士の交渉みたいだった。



わしらの子供時代は、古田抜きで語れ無い。 あいつと、わしらの気分は
ひとつだった。

古田は、わしらの子供時代の思い出の、全( じ )ェェ 〜 ン部だ。



  *       *       *



古田が、ガキ大将?  ガキ大将なんて意識、全く無かったよ。 ただ
われらの気持ちが、あいつの気持ちと、ひとつに成ってた事だけは、

確かだ。 選挙したわけでも無し。 自然と、あいつが中心だった。
わしらを率いて、遊び場へ行くあいつの姿、見せたかったぜ。



颯爽( さっそう ) ってえのは、あんなのを言うのさ。 わしらみんな、
あいつの尻( けつ )に着いて回ってた。

とにかく、古田は親分だった。



わし、散髪屋だから、古田の頭を刈る。 新田のボクの頭も刈る。
頭刈ってると、人間の桁が伝わって来る。

三桁位違うと思う。  その位、人間の巾に差がある。 人間の奥行き
が全然違う。 面白味が全く違う。

時代の差を感づる。



  *       *       *



新田君とワシ、二十三歳、離れてるから共通の話題など無い。 第一、
ワシは工場で仕事だ。

彼は自宅の部屋だろ。 姿は見るが、話した記憶は無い。
でもな、ひとつだけ不愉快な記憶が残る。



彼の十歳頃だったかナ。 ワシ、工場に付属の畳の部屋に通気孔を穿
( うがつ )つ仕事が有った。

通気孔が無いから、畳の部屋、湿気でじっとりだ。 だけどこれ、
ロハの仕事だから、休みの日にしろと言われた。



日曜日の朝だった。 タガネとハンマーで、コンクリを割り始めた。
ゴツン・ゴツンと、確かにうるさい。

だけど毎日じゃ無し、半日で終わる。 でワシ、構わずにやってたのだ。
すると二階の自室に居た新田君。 まだ十歳のネンネだぜ。



庭に出て来てよ。 うるさいのだろ。 抗議の積りでしょうかね。
悲鳴を上げるのよ。

キャァ 〜 ッ  キャァ 〜 ッ とね。




ワシ、アホかいなと、つぶやきつつ手を休めない。 絶対に休めない。
ここで手加減なんかすると図に乗る。

味を占( し )めて舐( なめ )められる。 たかが半日じゃ無いか。
この糞ガキメッ  と心で罵りつつ、



手を休めず作業を終らせた。 悲鳴も、根負けしたのか、聞こえ
無くなった。

だいたい新田君、小・中学生の頃は、いつもひとりで部屋に居た。
高校時代は、友人に恵まれてたが、



ワイワイ仲間の集まって来るタイプでも無し。 気の合う少数の仲間と
のみ、付き合ってる感じだった。

最近の若者は大概、こんなの、らしい。



だけど、作業がうるさい言うて、十歳のネンネに悲鳴を挙げられた記憶は、
芳( かんば )しい記憶でも無いぞ。

思い出すと、胸糞( むなくそ )が悪く成る。




< 古田氏と新田君の、学校の成績を比較する。>


散髪屋さん、いわく。

あれは十二歳だった。 古田の奴がよ、わしらの所、来て。 今日から
わし、勉強するって言うんじゃよ。

遊びはもう止めた。 勉強する言うて、行っちまった。 わしらも、
ネンネの時代は卒業して、年長組だ。



遊びまくってたわしら、それぞれの方向へ散って行った。 もうガキじゃ
ねえって気分が、ひしひしとした。

だけどさ、古田の奴、それ程賢くも無かったぜ。 松高( 小松高校 )
だから、上位組なのは間違い無いにしても、一番だ二番だって言う

そんな秀才でも無かった。



( ワシ 言わく )だけど大学は、中央の法科です。 小松高校の順位では、
四十番から五十番が行く大学です。

おつむ、比較的、良い方じゃないですか?




散髪屋さん、ハハハッと笑い、その中央大学だけどね。 知ってるかい?
松高の進路指導が言うたそうだ。

お前さんのオツムで、中大の法科へ行けるかってね。 そして、もし、
お前さんが中大の法科に合格出来たら、

ヘソで茶を沸かして見せるとまで、言うたそうだ。



古田の奴、悔しがってな。 今に見てろ、ほえずら掻かして見せんと、
ねじり鉢巻、徹夜徹夜で猛勉したそな。

合格した時、その先生の所へ真っ先に行って、先生、合格しました。
約束通り、ヘソで茶を沸かして下さい。  言うたそうだ。




ワシ、ハハハハッと笑ったね。



  *       *       *



一方の新田君、お母さんが自慢に来られた。 ウチの子、小松高校で
一番を三回、二番を二回、取りました。

これは標準テスト、言いましてナ。 入学時から年三回。 卒業までに
九回実施されるテストです。



その内の五回、一番と二番なら、こりゃ秀才だ。 だけどワシ、新田君の
お母さんを、たしなめた。  何故か?

お母さん、その成績なら東大か、悪くても京大の成績ですよ。 それが東
大でも無く、京大でも無く、一ツ橋でも無しに、中大でしょ。



東大から見れば、三ランク下です。 そりゃ自慢に成りません。 むしろ
恥です。

松高でトップを五回も取って中大の法科では、情け無いと言われます。
肝心の時に、力の出せ無い奴と言われます。

今後、そんな的外れの自慢、してはなりません。



  *       *       *



新田君のお母さん、憮然たる表情して行って仕舞われた。 諸君らは、
こんな憎まれ口、叩いちゃ、いけませんぞ。

今日( こんにち )のワシと新田家の間の、気分の疎隔。 ワシにも責任
の一半、有るかも知れんナ。




息子さん、凄いんですねえ 〜 と、感心してりゃ良かったのです。 余計
な事、言うでは無いのです。

ワシ、解ってて、ついつい言ってしまう。 反省・反省。反省。 反省は
しますが、治る気配、一向( いっこう )、有りませんがね。



  *       *       *



書き落としを、ひとつ書く。 工場の在った小松市の郊外の町。 村の
産土( うぶすな )神のお祭り。

小松の有名な、お旅祭りとも、少し南方に在る今江町の祭礼の日とも違い、
この町だけの日に、単独で挙行される。



ワシの工場にも毎年、子供獅子が来て呉れる。 ちょうど新田君が中学
二年、子供獅子の世話係りの年だった。

旋盤の仕事してると、獅子舞の笛と太鼓、だんだん近づいて来る。
今年も村の祭礼だ。



なんて思ってると、一軒、飛ばしやがったのよ。 ワシ、ムカッとした。
産土( うぶすな )神の祭礼の子供獅子、言うたら、

個人の物じゃ無い。 村の鎮守様の代理じゃ無いか。 神様のお使い
だぜ。 飛ばすとは何事かッ

この野郎めと、ワシ、腹の虫が騒いだ。



そこへ小学生の可愛い男の子二人、祭りの衣装してやって来た。 ○○
町の子供獅子です。 花を打って下さいッ



  *       *       *



おいッ、おめえらッ とワシ、喧嘩腰。 あそこの家を
飛ばしやがったな。

どう言う料簡( りょうけん )か、説明してみろッ




男の子二人、ワシの思わぬ対応に、ギョッとして、たじろいだ。 そして
あそこの家は学会の家だから、

行かなくて良いと新田さんが言ったから行かなかったのですと、弁明だ。



な、なぬう? 確かにあそこの一家は学会だ。 だけど子供獅子は別だ
言うて、神社の寄付はせんが( しないが )、

子供獅子には花を打ち、毎年、舞って貰ってるじゃないかッ
それを行かなくて良いとは、何事であるかッ



と、怒鳴り付けたものだから、男の子ふたり、ビックリして逃げて
仕舞った。 よってその年は、ワシの工場も、子供獅子、無し。

ワシ後年、新田君に申し上げた。 君、産土( うぶすな )神の神事。
わたくし、してはいかんよ ・ ・ ・ と。



この一事にて君は、北陸電力など言う大企業のエリートコース、落第である。



  *       *      *



< 両家のご両親は、どんな方々か? >


古田暉彦( あきひこ )氏のお父さん、教師であられた。 定年後、教育
委員会の仕事、された。

( 新田君のお母さんによれば、だが )余りに永く続けるので、後輩の
先生方から、もう止めろの文句、出たそうな。

ま、そう言う不満、有ったかも。




だけど知り合いの教師に聞くと、反対の情報だ。 古田氏のお父さん、
人望が有ったのです。

余人に変え難かったから、ついつい、長居に成っただけ。
なるほど。



どっちが正しいか、ワシ、断定しかねる。 どっちでも良し。
教育委員会にて、永く永く仕事された事だけは、事実だ。



  *       *       *



最近、古田暉彦氏、お父さん( 古田福松氏 )の文集を出版された。
本 < 風雪の譜 > である。

出版当時の古田氏の肩書き、富山市の教育委員長。 お父さん、どんなに
か、お慶びだったでありましょう。



お父さんの福松氏、実はね、息子が北陸電力へ入社と決まるや、息子の為
にと、有りったけの貯金を叩( はた )いて、

北陸電力の株を買ったそうな。 当時だぜ。 一株・百五十円から二百円
の時代だ。



現在の北陸電力の株、一株、幾らかね? 千五百円? 誠に誠に息子孝行
な、お父さんでは、ありまするなああ 〜 。  うらやまし。

ワシの父に福松お父さんの爪の垢、飲ませたかったと、愚痴のひとつも
出るところ。  君とこのお父さんは、如何ですかナ?



  *       *       *



ワシ、この福松お父さんと、裏通りの細道にて、バッタリした事あった。
ワシ、愛犬の散歩。

うっかり、対向者を見落としたのだ。 知ってりゃ、手前で待ってるよ。
あっ、お爺さん、すまねえ。



言うてワシ、道を譲って下されたお礼言うて、通り過ぎた記憶ある。
その際、ああ良いお爺さんだなと、心に感じたものだ。

次の第四章、我が同級生賛歌を見て呉れい。 出世する奴、親が出来てる
場合が多い。



曽田義則君だとか、林利行君のお父さんなんかには、頭が下った。 この
古田福松お父さんにも、

そんなとこ、有ったなぁ 〜 。 息子の出世、二代懸り( にだい
がかり )かも知れぬ。



  *       *       *



そんな目で見ると新田君のお父さん、反省が必要かも。 実はワシ、新田
君のお父さんと、冷戦状態なのだ。  原因は何か?

あれは工場を整理して、いよいよ埼玉県は坂戸市、明海大学歯学部へ引越
しの日だった。



ワシ、新田君ちへ挨拶に行ったのよ。 お父さんは不在。 お母さんに
新しい住所なんぞ、封筒に入れたもの渡し、帰ろうとして帰れない。

新田君のお母さん、油絵が趣味。 見て行け言うて離( はな )さぬ。
弱ったなと言いつつ、部屋に引っ張り上げられた。



二時間、お母様の油絵自慢。 やっと帰れば玄関にお父さん。 家に入ら
ず、お車の中でお待ちかね。

恐らく、ワシの帰るの、車の中で、イライラしながら待ってたのでしょ。
如何にも、新田君のお父さんらしい。



  *       *       *



問題はここからです。 しばらくするとお父さん、工場へ現れた。 そ
してワシの新住所を入れた封筒、真っ二つに引き裂いて、

こんな物、いらん  言うて押し返しつつ、悪態を吐いて行か
れた。




ワシ、アホかいなと言うて仕舞った。

新田君の家には、お母さんの手で、引っ張り上げられたのですぞ。
油絵の自慢、長々と二時間、ほざいたのは テメ 〜 の女房じゃない。



こっちは、むしろ被害者だ。 お父さん、あんたは ネンネか? こんな
馬鹿な真似、してはいかんですよッ

自分の女房に、あいつを家に上げるなと、叱れば良いのだ。



新田君のお父さん、息子不孝者であるか? これまで三十余年間、
大過( たいか )無く普通に来て、

いよいよ引越して、居なく無る日の前日だよ。 何の見識有って、こんな
馬鹿な真似、したんじゃい?



  *       *       *



ワシが工場跡地から居なくなって、早くも十余年だ。 ワシの母が、想い
出の土地だから、売らないで呉れ。 言うので、こんなに永く保有した。

この間だ。 薮蚊( やぶか )がうるさいから、雑草を刈って呉れの要請。
新田家から舞い込む。 費用だけで数十万円だ。




やぶ蚊なら、蚊取り線香でも、燃( たい )てろ。 高いブロック塀の中
に、こもり居て、何が雑草だ。




雑草を刈れの文句、如何にも、はした無い。 これには、力学が有る
のだ。

新田君のお母さん、ワシが仕事しながら見てると、隣りの A 家との
路地に出て来た。



A 家のお婆さん、横に居た孫娘に、挨拶しなさいと命じた。 お隣の
新田さんの、お母さんですよ。 ご挨拶しなさい。

ご挨拶しなさい。 ご挨拶しなさい。 ご挨拶しなさい言うのに、孫娘、
新田君のお母さんを、ギュ 〜 と見つめたまま、挨拶せん。



A 家のお婆さん、恐ろしい声で、挨拶しろと、孫娘の頭に手を掛けて、
実力で挨拶させようとして、挨拶しない。

孫娘、飽くまで抵抗して挨拶せん。



  *       *       *



新田君のお母さん、ホホホッと笑い、良いのですよと言うて、自分の家に
入られた。

そこからよ。 新田君のお母さん、ワシのとこ来て、犬がうるさいだの、
雑草刈れだのと言い出したのは ・ ・ ・




雑草で迷惑するのは、むしろ A 家の方だ。

新田君ちは、高い高いブロック塀の中でしょ。 雑草なんて、関係無い
のよ。



だけど、文句来りゃあ、刈らねばならぬ。 その費用、この数年で、
数十万だ。

くそったれと、言いたくも成る。  怒りさえ感ず。 古田氏の
お母さんなら、絶対に、絶対に、こんな事は言わぬ。


  *       *       *



A 家の孫娘にも、問題、有るナ。 あの子、お婆さんの初孫。 べた
可愛がりで育ててみりゃあ、あのザマだ。

お婆さんっ子は、八文安いの、証明版ってとこだ。 これはこれで、又
問題だ。 改めて書く。



  *       *       *



ワシ、新田君に言ってやった事有る。 君、こんな両親では大企業の
重役なんて、如何なものか?

出世するまでは猫を被( かぶ )れるが、出世が終ると、恐らく君は、
お父さんやお母さんの、精神的遺伝子の発動で、嫌いな奴を追い出し、

碌な事、しないだろ。 皆様の迷惑に成るから、今の内から我が身の心根
本気で見つめ直( なお )しとけ ・ ・ ・ ってね。



ま、こんな事、言うよな人間だから、こんな本、書くのだ。



  *       *       *



< 古田氏の年収について >


新田君のお母さん、ある時ワシに、こう言うた。 古田さんは、必ず社長
に成りますッ  絶対ですッ

そりゃ凄い。 そう成ると新田さんちの ○○君も、重役、間違い無しで
すな。



新田君のお母さん、これには返事せず、古田は必ず社長に成るを復唱した。
ま、それも良いでしょ。

問題は、この後の会話です。 古田暉彦( あきひこ)氏、当時、取締役
だったかな?



その年収を話された。 いわく、北陸電力からの給与は、この程度です。
でもね、

関連会社の社長とか、色々有って、年収の総額は、軽 〜 く、一億を越え
てますに、ワシ、感嘆の声を上げた。

そりゃ凄いッ  本当に凄いッ



  *       *       *



平成23年( 2011年 )の3月11日の東日本大震災だ。 東京電力の福
島第二原子力発電所、事故、起した。

当時の東電社長は、清水正孝氏である。 責任を取り、年収の半分、返納
すると発表した。 報道されたので、ご存知だろう。




インターネットで記事を見ると、コメントが出とる。 東電社長の清水正
孝氏、年収の半分でも、まだ、三千五百万。

ワシ、ただちに、文句、入れといた。 考えても見ろ。 東電から見たら
二段格下の、北陸電力の、だぞ。



たかが取締の年収が、一億を軽く突破なのだ。 東電の社長の年収が、
それより下( した )って事、有り得ない。

清水社長は、東電から七千万の年収を貰ってて、それだけを言うとる。
清水氏の年収の総額を言わな、あかんだろ。






東電以外から、どれだけ貰ろとるのか?
年収の総額を言うて

そこから議論に成るのだッ




東電社長の総収入を正確に言うてこそ、責任論じゃろが。 清水社長から
見れば古田氏なんぞ、格下北陸電力の、それも取締役でしかない。

それが年収一億円超だ。 東電の社長の清水正孝氏、年収がそれ以下だ
なんて、誰が信用するかってんだよッ



この書き込みに、そう思うが二名付いた。 だけど次の日には、早くも
ワシの書き込み、アクセス不能に成ってた。

何かの力学を感ず。 東電、マスコミの上客だかんね。
ワシ、マスコミのゴミ。  入力の方、ゴミ以下じゃないの?



  *       *       *



北陸電力も、石川県羽咋市に、志賀・原子力発電所を持つ。 あそこには、
ワシの工場で加工した部品が、二点、入っとる。

ワシ、原子力発電は、賛成でも反対でも無い。 岡目八目。 だけど、親
会社を通して原子力発電所産業を見てると、



ゴツウ儲かるのだけ、際立って見えた。 札束で横面( よこつら )張っ
てる感じがした。 

問題は、そこだ。 ワシの横面が、張られなかった、ちゅう事だ。
だから当然、ひがむ。 非常にひがむ。 (頭韻を踏んでみた)



なにしろ、だ。 志賀原発の近所の貧しい農家。 日立の社員が来てよ。
ここに原発工事の従業員用の宿舎を建てたい ・ ・ ・ 言うのよ。

その土地使用料が、な、なんと、月百万円だぜ。 海岸沿いだ。 浜風が
強く、野菜の収穫なんて、年に三十万有れば、豊作の土地だぜ。



寄宿舎用の、土地代が、月、ひ・百万円? お爺さん、卒倒したそうな。
ワシも言う。 ウチの近所に、原子力発電所、造って下さい。

そして、ワシの工場の土地を使って下さい。 月百万なんて、そんな
贅沢、言いません。



月四十万で、手を打ちます。 是非、是非、原子力発電所さん、来て下さ
い。 ワシ、死ぬまでに一回で良い、札束で横面( よこつら )張られて

見たく、思い候( そうろう )なのですです。 と成るやないかッ



  *       *       *



折角だから、次の段( ページ )にて、ワシの、原子力発電所に対する
客観的見方、略記する。

この問題は根が深い。 詳細は、別の場所にて、さらに論ず。



  *       *       *



古田氏と新田君の自宅。 ワシの工場の、余りにも近所だったので、つい
つい比較して仕舞った。

そうだ、新田君のお母さんには、もうひとつ、話題が有った。 古田氏は、
畑を所有してた。 工場の近くだ。



古田氏、休日はよく、畑で鍬( くわ )を振っておられた。 その後
ご両親を連れて、富山に転居されたので、

畑は、新田君のお母さんに任せられた。 で、新田君のお母さん、何を
したか?  と言うとだな、




まず、雑草を刈った。 それは宜い。 次にそれを、穴に埋めた。 問題
は、その穴だよ。 隣家の土台の根元に、穴を掘ったのだ。

広い畑だ。 何を好んで、そんな隣りの家を掘り崩しかねない所に、穴を
掘るのか?



ワシ、町内の回覧板、その家に運びながら、石垣越しに覗いて見た。
人間が入れる位の、大穴だ。

思わず、アホかあ 〜 と言うてしもた。 これは古田氏を通じ、注意
しといた。 もっとも古田氏は、注意しなかったようだが。



だけど常識として、そんな所に穴を掘っちゃあ、いかんぞなもし。



  *       *       *



ワシの新住所を入れた封筒を、真っ二つに引き裂いたお父さん。 人様
( ひとさま )の家の土台の傍に、大穴掘ったお母さん。

古田氏のご両親なら、こんな事、絶対にしないだろ。 新田君とこは、
したのだ。 この差、小さく無い。



その息子の新田君は、産土神( うぶすながみ )の子供獅子舞、嫌いな家
を飛ばして行った。

親子で、同じ事しとる。



***********************************************************************


( 以上の文に対し社会学専攻の A子先生から コメントを頂いた。)



久治良先生は新田さんを、否定的な気分で書いてますが、
最近は何処へ行っても、新田さんみたいな人、ばかりですよ。

確かに古田氏と新田さんの少年時代の過ごし方には、優劣が有ります。
でも最近の子供達、例外無く、新田さんタイプの成長ですからね。



ただ、新田さんのご両親は、考え直す余地、
少し有りそうですね。



でも見て下さい。 新田さんのお父さん、ご自身も北陸電力の社員でした。
定年ですから、年金生活です。

電力会社の年金は、公務員より有利です。 月に四十万前後でしょ。
年金だけで、年収四百八十万ですよ。



だからお父さん、前妻の子を含めて、北陸電力の社員しました。 後妻
の息子の新田さんは優秀だったので、

北陸電力の、エリートコースでの入社です。




二人の息子さんを、見事、有利な道へ進ませてるじゃ無いですか?

二人の息子さん、将来はきっと、お父さんに感謝すると思います。
そう成ると、いよいよ書かれてる様な事、しない方が良いですね。



  *       *       *



東日本大震災から、東京電力の福島第一原子力発電所の事故。 東電の
首脳陣が仲良しクラブだった事、天下に知れました。

社長の清水正孝さん、茶坊主上がりだ、なんて言われてますけど、
事故後の行動見てますと、反論、出来ませんものね。



好きで無い人は、排除される時代です。 今や骨の有る人、意見を言う人、
感覚の合わない人、追い出される時代です。

そんな嘆き、一流企業からも聞えます。 お母さんに、ぺったり可愛が
られて育った人ばかりの社会では、そう成っちゃうのね。



みなさん押しなべて頭良い。 人当たりも良い。 問題が起こらない限
り、そんな方々が優勢のようです。

問題と事故が起こらない限りは ・ ・ ・ ですけど。



  *       *       *



これからの時代、新田さんみたいな人、ばかりです。 調査研究で、
会社で、そんな方々と話して居ると、

みなさん、凄く魅力的なんです。 でもトップに登り詰めると、本性を
現されると言うのか、



嫌いな人、感覚に合わない人、押し出してしまう。 この傾向、東電や
官僚の世界の様に、他社との競合が無くて、

特権に守られてる世界ほど、酷( ひど )いです。 今回の事故で東電の
首脳陣、勘違い、したみたいに、

仲良しクラブの論理で原子力発電所の事故に対応です。



どうにも成らなくなり、初めて、どうしよう? って周りの専門家に聞く
んだもの。 あの事故、人災ですよ。

それからが凄いと思います。 事故、そっちのけで、官庁相手に東電を
存続させる根回しでしょ。

そんな事になると、仲良しクラブの論理。 有効ですからね。
迷惑するの、こっちですけど。



  *       *       *



つまり、これからの世の中。 新田君みたい育ちの人、ばかりです。
久治良先生は、あんなのが北陸電力のエリートコースかと、お嘆きですが、

今や、あんな子、ばかりなんですよ。 だから不思議無いのです。 ただ、
新田さんのご両親の行い、ちょっと考え直したいですね。

お子さんの出世の足、引っ張ってるの、確実ですもの。



***********************************************************************


 ( 次は 伊田先生の意見である。 )



久治良先生、これは先生の負けです。 理は先生の勝ちですが、利 は、
新田家の勝ちです。

お父さんは北陸電力で、電柱に登っての仕事でした。



その息子さん、成績が良かったから、お父さんと同じ北陸電力ながら、
エリートコースです。 さすれば、

三十歳で年収一千万。 現在四十歳なら、二千万前後でしょ。 副社長
だった古田氏の引きで、異例の出世だそうですが、



入社して十七年、大した破綻も無く、出世コースに乗ってるなら、社長や
副社長はともかく、

部長位なら、行くのじゃ無いですか? その気配、濃厚です。 さすれば
生涯収入、たっぷりです。



  *       *       *



電柱に登ってたお父さんすら、月に四十万の年金で、悠々自適でしょ。
エリートコース・十七年だけで、新田君の人生、

保証されてます。 新田君のお母さんに、工場跡地の雑草を刈れと言
われて、悔し紛れに書いた文章でしょうが、



そんなヒマ有れば、患者さんのひとりも、診た方が良いのじゃ無い
ですかな?

この勝負、新田家の勝ちィィ 〜  です。



  *       *       *



でもね先生、お話を聞いた限りでは有りますが、新田君のご両親のお振る
舞い、普通人以下ですな。

良く有りません。 土地を売却して去って行く久治良先生に喧嘩を売って、
何が得なんでしょ?



ご両親、考えないといけません。 息子の出世を妨害してるようなもの。
ですが私の見るところ、新田家は、

大変な福運の上に住まわれてると出ます。 この福運は、何でしょう?
何処から来てるのでしょう?



おそらく、その一帯の土地に、福の隆盛運が潜むからでしょう。 人力を
越えた力ですから、恐れ畏( かしこ )まる以外に、

申し上げる事、有りません。



以上が、伊田先生のお話でした。



***********************************************************************



< 蛇足・古田暉彦( あきひこ )氏は、何故社長に成れなかったか? >



新田君のお母さんが、或る日ワシに、古田さんは、必ず北陸電力の社長に
成ると断言した。 それは書いた。

だけど古田氏、社長に成れなかった。 副社長止まりだった。



何故に社長に成れなかったのか? ひょっとしたら、新田君のお母さん
社長に成る、社長に成ると、

近所に触れて歩いたからかも知れぬ。 冗談抜きで ・ ・ ・
次に、古田氏が社長に成れなかった理由を、ワシの見地から書く。



実はね、ワシ、古田氏がまだ部長の頃、社長には成れぬと、申し上げた事
有るんよ。

その理由を、次に書く。 だけど、こんな事を言うなんて、ワシも場外れ
者だナ。 こんな本、書く筈だ。



  *       *       *



古田氏夫人は美人の誉れが高い。 良妻賢母の鑑( かがみ )でも有られ
る。 しかしだ、ワシの個人的観察ながら、

やや疳( かん )が、お強くあらせられる。 道で嫌いな人に会うと、
あらか様に、キャッ、などの声、発せられて、夫の後ろへ退避など、

される。



ワシ、近所なんで、ある時それを目撃した。 当時の古田氏、部長だった
かな?

ワシ、氏に言うていわく。 あの嫁さんでは貴兄、部長までは奥さんの
内助の功かも知れぬ。

しかし、それ以上の出世、奥さん、阻害要因だっせ ・ ・ ・ と。



だからワシの見方では、古田氏、社長に成れなかったでは無い。 むし
ろ、これだけの反作用を受けながら、

副社長にまで登った。 なのだ。 これこそ古田氏の、少年時代の、あの
仲間達と遊び捲( まく )った日々の経験が、

氏を引き上げたのだと、ワシは思う。



だから、これで良く、副社長にまで成れましたねと、ワシ、むしろ
感嘆したい。



  *       *       *



新田君みたい、一人で自宅の勉強部屋。 何をしてたか知らんが、そんな
記憶より、近所の仲間を引き連れて、遊びまくった経験の方が、

人生には、はるかに有効だろうと思う。



現代のエリート、ほぼ例外無く、新田君式の少年時代だ。 政界も官界
も、金融界も実業界も、大学の教授連も、

みなみな新田君式の、勉強おたくの少年時代の方々だ。 明日の日本は
その手の人々が、すべてを担( にな )うのだ。

喜ぶべきか、恐怖すべきか?



学校方式の勉強、明治維新には有効だったが、先の大戦の敗北で馬脚が
出た。

大東亜戦争( 学校の教科書では、太平洋戦争 )の敗戦は、学校秀才敗戦
だと、ワシは思う。



現在の経済苦境も、学校秀才による、同じ様な敗戦だ。 毎年東大に
四千名ほどの学生が入るが、

あの中に、古田氏みたい少年時代の若者、何名居る? ひとりも居ない
のと違うか?



そんなのが成績だけで、エリートに成るのだぜ。 大東亜戦争の敗北、
現在の経済戦争の敗北。

学校秀才さん達は、次に何で敗北する気だろう? たいがいに、して呉れ
と言いたい。



だけど、今の日本、勉強おたく出身の、学校秀才の天下だから、またぞろ
何か、やらかす。

絶対に間違い無く ・ ・ ・



***********************************************************************



さて北陸電力が出たついでだ。 次段にて、ワシの、原子力発電に対する
意見を、表明したく思う。

ワシ、賛成でも反対でも無い。 岡目八目。 その岡目にて、原子力発電
の全体を、俯瞰( ふかん )して見る。

賛成派、反対派、どっちの皆さんにも参考に成ればと、念じつつ書いた。



  *       *       *



ある方、言わく、平成23年( 2011年 )3月11日の福島第一発電所の
事故と、その後の東京電力の首脳陣の対応に、

あのロスチャイルド様が、激怒なんだそうだ。



普通なら、東電社長の 清水正孝氏、処刑である。 その位い、お目出度い
事故対応だったそうな。

諸記事を検索すると、世界の原子力産業を支配する、ロスチャイルド様の
記述が、一切無い。 ロの字も出て来ない。



書いてはいけないのであろう。 書くと生きて行けなく成るのかも知れぬ。
だけど、原子力産業の大元締めは ロスチャイルドである。

僅かに漏れ出る情報を集めて、書いて見る。 もっとも、ワシの耳に
入る様なアングラ情報は、信用出来ないがね。

用心しつつ書いて行く。



だけど原子力産業は、その位、巨大な力を背景にしとると言う事実。
何人( なんぴと )も認めねばならぬ。

我ら、その巨大な力の前の、か細い芦( あし )の一本に過ぎぬ。
だが一寸の虫にも、五分の魂( たましい )だ。

見るべきものは、見る。 書かねばならぬ事は、書くのだ。



では、次段にて ・ ・ ・






*       *       *



< 前のページへ帰る >   *   < 次のページへ進む >

< この本の ホームへ帰る >

< kujila-books ホームへ帰る >



* 


<  kujila-books.com  >