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第　二　章　*　１ / ６ ＜歯学部、女ゆえの悩み　（序曲、あらしの予感）＞

＜　歯学部、女ゆえの悩み　＞ 大学で、女の子と話してますと、男には無い悩み、聞く事が出来る。 その女の子も、卒業時、二十五歳。 歯科医の修行、当然したい。　結婚も、したい。　結婚すれば出産だ。 育児、誰がするの？　ああ、どうしたら良いの？ 子供生むのは、良い。でも、育児でブランク、したくないの！ 本当言うと、出産もいやだ。　育児で一年間、何にも出来ない。 ああ、どうしたら良い？　良い方法は無いの？ 彼女、真剣に悩む。 まして、二十六歳で入学、すでに結婚してる女性、卒業時、三十二歳だ。 子供、まだ造ってない。 旦那、何んて言ってるの？　子供、何時（いつ）造るの？ 彼女、髪振り乱して、ワアアッ！　あたし、どうしたら良いの？ 一番大切なときに、出産でブランク、したくないの！ わたし、歯医者さんに、成りたいのっ！　誰か、わたしの赤ちゃん、産んで！ 女いやっ！　男に、成りたああいっ！ こんな具合に、日本でも、代理母の需要は、かなり有る。 アメリカでは、とっくの昔、産業の一分野として、稼動してる。 しかしアメリカの代理母も、不妊症で悩む女性の代理はしても、高収入、 キャリアウーマンの代理は、心理的、拒否する傾向が、有るそうだ。 　*　　　　　　*　　　　　　* 閑話休題（かんわ、きゅうだい） 三年次の、実習でした。我等、白衣をまとい、実習室に向けて、階段を登っ て、居りました。　手には、道具箱。 ワシ、横を行く学生に、何気なく話しかけた。 君、授業終わって、アパートへ帰って、毎晩、何してるの？ その学生、ボクですか？　そうですねえ、 たいてい、ビール飲んでジャズ聴いて、マス、掻いてます。 ワシ、あまりにストレートな返事に、オヨヨッ、と成って、 聞こえない振りして、そのまま、階段を、登った。 率直さも、度が過ぎると、返事に窮する。 でも、そんなもんでしょ、二十二歳の春は。 ＜　現役の女医、心境を、語る　＞ 三十三歳、厳かな（おごそか）な顔した、良い女、だった。 卒後八年。分院長。 ご主人は、大学時代の同級生、卒後、結婚。大学院時代に、一児、出産。 彼は、そのまま、大学の勤務医。 仕事場と、住居の関係で、平日、別居。　休日、夫婦。 彼女いわく、妻と、母と、歯科医を、一度にするのは無理なので、妻は、 完全に、手抜きしてます。　土曜の午後は、子供とべったり、くっつい て、母の演技、半日だけ。　日曜日は、掃除と洗濯です。 そのうち主人から、三行り半を出されるの、覚悟してます。 その日の為に、貯金、してます。 彼女は、分院長だから、給与、当然よろしい。　だいたい彼女、資産家の 一人娘。　親は都内に、かなりの土地、所有してる。 三下り半とは、離縁状のことですが、彼女、むしろ、待ってる気配。 歯科医院で、夜の九時まで仕事して、電車で帰宅、夜の十二時。 もっともご主人、大学の近くでアパート暮らし。　普段は別居。 こんな具合に、収入の多い女性、独立した考えを、持つ。 彼の為、何て、殊勝な考えは、サラサラ無い。 離婚なんて、別に、どうってこと無い。　むしろ、気を使う人が居ない分、 好ましいかも。 こんな女性、ステキな彼と、大人の関係の方が、むしろ良い。 ステキな彼、結婚してても、かまわ無い。　返ってその方が、結婚するの しないのと、余計な心配、せずに済む。 今は、そんな時代だ。 高収入の世界へ行けた女性、すべからく、この方向へ、進む。 理の、当然なんである。 ＜　あらしの、予感。　あらしの序曲が、始まった。＞ 一年次、パソコンの講座だった。 年度末が近ずくと、課題の提出、求められる。 五人に、一つの課題。　使うソフトは解剖学。　CD一枚、百万円ざんす。 表示は、五ヶ国語。英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、日本語。 世界的な、ソフトだ。 チームは、五人で一組。　と、言う事は、五人が交代で、キーを打つ。 課題を、仕上げると、誰しも、考える。 ところが現実は、違うのだ。 王子さま一人、マウスを独占、悦に入っておる。 残りの学生、取り巻いて見学。　文句、言うでも無し、諦めの気分。 女の子、とっくの昔、どっかへ出掛けて、一人も居ない。 次の週も、同じ風景。次の週も、同じ風景。 ワシ、見かねて、口ばしを入れた。 君、一人でしてんじゃ無いよ。今日は、引っ込んでなさい！ 強制的に排除。　別の学生に、やらせた。 次の週、パソコン教室へ入ると王子様、次の番の男の子と、 遣り（やり）合っておる。 替われよ。今日は、ボクの番だぜ。　替われよ！ 王子様、あと五分、あと五分！ 五分が、過ぎた。 替われよ。五分で交代すると、言っただろ。 王子様、もう五分、もう五分なんだ！ さらに五分が、過ぎた。 約束、違うだろ。　替われよ！　替われよ！ もうチョッとだけ、もうチョッとで済むんだ。ホラッ、見てよ。 これを仕上げれば、お仕舞い、なんだ！ 結局、授業の最後まで、王子様が、キーボード。 普段は、良い若者なんだがね。　明るくて、礼儀、正しい。 でも、この有様。 これが、明海大歯学部における、一人でしたがる王族との、最初の 出会い、だった。　かくの如き次第により、ワシは、解剖ソフトに触る 事も、触れる事も、無かった。 ＜　五体不満足、乙武洋匡（おとたけ　ひろただ）さんなら、 　　　　　　　　　　　　　　　　　この問題、どう判断する？　＞ 明海大の教養では、コミュニュケーション学と称して、手話の講座が、有る。 ワシ実は、不具者である。　障害六級、左手の人示、中指が欠損しとる。 利き手は、右手だ。　欠損が右手の指なら、歯科医は、無理。 医学部の外科だと、指欠損の人、入局を拒否される。 ワシ、入試の面接で、若い先生から、そんな手で、歯科医に成れると、思い ますか！　と言われ、なんか目頭、熱くなった記憶が、残る。 あの時、これは不合格だと、観念した。 だもんで、合格通知が何故か、不思議なものに、見えたもんだ。 手話の授業の最初、ワシは演壇の先生の所へ行き、障害を申告した。 配慮して、もらいたいむね、頼んだのだ。 この先生、長年、障害者（難聴者）の世話を、して来た方なのに、 そんな事、誰も気に掛けては、いませんよ。　あなた、気にし過ぎ、気に し過ぎ！　と、取り合って呉れぬ。　ワシ憤然と、色を成し、何を言うん です。　障害者の気持ち、分らんのか！　と、声を荒げたものだった。 授業の最初は、指文字と言うて、右手だけで、あいうえおを、表記する。 これは、片手だから、問題は無い。 問題は夏休み明けだ。　手話の時間が、始まったのだ。 この先生、中村メイコの手話通訳、した位だから、自分で すれば良いのに、仲間の先生を呼んで来て、授業、してもらった。 ワシ、この先生にも申告して、配慮してくれる様、頼んだのに、 この先生も、そんな事、誰も気になんて、してませんよと、請合わない んだ。　ワシ、内心で叫んだね、なんだ、こいつら？　障害者の気持ち、 分らんのか？　人には分れ、分れ、抜かしといて、テメーら、分ってな いだろ！ 先生、講義で言うわけだ。 わたし、ある市役所の担当者に、徹底的、抗議しました。 あんな失礼な事、言うなんて、絶対に、許しません。 市役所の担当者、何を言ったか、と言うと、今日は、障害者の方、 予想外に沢山、お見えですね。と、言ったのだ。 この一言が失礼だ、と言って、市役所として、謝罪するまで、抗議した そうだ。　さらに先生、こんな事まで言った。 学生の皆さん、皆さん方の、何気ない一言が、障害者を傷付ける事が 有りますから、十分に、注意して下さいね。 それじゃあ、ワシのは、どうなるんじゃ？　と言うと、それは、気に し過ぎだ、と言われる。　どうなっとるんじゃい？ 新しい先生、両手の人差し指を、むき合わせて、こんにちわ、 おはよう御座います、を始めた。 ワシ、左手の人差し指が無いから、出来や、せん。 腕組みして、うつむいて居た。　その時だ。この先生、何を考えとるんじゃ、 ワシの名を言うて、前へ出て、こんにちわの手話を、演じて下さいと、言う んじゃ。 ワシ思わず、馬鹿野郎っ、テメーはアホかっ、指が無いのに、どうして出来る んじゃっ！　と、大声、出してしもた。 先生一瞬、ギクッとして息を呑んだが、次の瞬間、さあー皆さん、 今度は、ありがとうを、勉強しましょう！ 上手いもんですよ。　話を、逸らす（そらす）のが。 ワシ、授業が終わるまで腕組み、針のムシロ、だった。 腕組みの腕を、机に持たせ、授業の終りを、ひたすら、待った。 授業が終り、外に出ると、先生、追いかけて来て、何と、ワシを叱るのよ。 あなたは、誤解してる。あの先生は、指の無いあなたが、手話で、何とか こんにちわ、を、しようと努力する姿を、学生に、見せたかったのが、 どうして判らないの！　あなたの指が無いのに、努力する姿、学生に、 きっと、すごい感銘を与えると、わたし、思うの。　それを解ろうとも しない、あなたの心が、とても、悲しい。　だとよ。 ワシ、頭が、変になって来た。　 乙武さん、これ、どう思う？ 諸君らは、これ、どう思う？　　両手両足の無い乙武（おとたけ）さんに、 ワシが、かっぽれを踊れと、言ったら、ワシは、どんな目に会う？ それからの授業、欠席した。 軽食堂に居ると、教室が良く見えた。　コーヒー飲みながら、眺めておると、 くだんの先生、両手で手話の授業、続けておる。 無神経な、ヤッチャなあ（無神経な人だなあ）とワシ、呟いた。 *　　　　*　　　　* 障害者の講義で、参考になりそうな所、次に、掲載する。 若い皆さん、もう、知らないかも、 横断歩道でね、青信号になると、最初の頃、通りゃんせ、の曲、鳴ったのよ。 障害者から、文句、出た。　あの歌、最後、（御用の無い者）通しゃせぬ、 でしょ。　それで、小鳥の鳴き声に、変わった。 歩道とか、駅のホームに、ブロックのポチポチ、有るでしょ。 何人もの障害者が死んで、やっと実現したの。 歩道のポチポチの上に、自転車、置かないでね。 目の見えない人、困ってしまう。 私の専門は、聴覚障害、音が無いと、命に係わる事、有るのよ。 道じゃ、車に、はねられるし、隣の部屋、火事なのに、気が付か無い。 昔は死亡率、高かったのよ。 同じ聴覚障害でも、肺結核の治療薬、ストマイ飲んで、つんぼに、なった人、 それから、五歳ごろ、花火で聞こえなくなった人。　生まれつき、耳の、 不自由な人、大学時代に、薬の副作用で、成った人。 条件が、全部、違うのよ。 同じ、聴覚障害でも、いろいろ有るのよ。 皆さんが勉強した、指文字、大砂源助先生が、外国から、導入した。 日本の聾（ろう）学校、相手の口を見て、会話する練習。 手話は、禁止なのよ。　文部省は、就職してからの事、考えてる積り、 でも、実情に合わない。 口話法を、磔（はりつけ）の刑、と言うの。チョッとでも、目を離すと、 もう、意味が分らない。相手の口の動きで、コミニュケーションするの、 すごく、シンドイのよ。 両親が障害者で、子供が、健常者の場合、用心しないと、感覚の、変な子 に、育ってしまう。 ドロボーを、ドロボーと、思わなかったり、　自分のこと、わたしは、 Ａさんです。なんて、言うようになる。 両親が、話せないと、子供は、近所の家へ行って、言葉を覚えて来る。 その時、変な言い方してても、親が障害者だから、分らないのよ。 普通なら、アハハ、自分のこと、さん付けで、言ったりしてって言えば、 すぐ直る。　その辺、理解して、上げないとね。 皆さん方が、聴覚障害者に、何か、伝えたい時、そばへ行って、軽く打って、 合図してから、話すのよ。 話すとき、口を、大きめに開けて、口形を、ゆっくり、明瞭にしないと、 分らないよ。 空書（くうしょ）と言って、空中に字を書く方法も、良いわね。 補聴器は、全部の音、拾っちゃうから、そばに来て、大声なんか、 出しちゃあ、駄目よ。 ＦＡＸ、すごく便利。あれの普及、会社が一番だけど、次は、聴覚障害者 なのよ。知ってた？ 多様性を、理解できる人。甘受、出来る人に、成ろう。（賛成！） バスの行く先、文字で、書いてあるでしょ。あれ、障害者の為に、したのよ。 健常者にも、便利でしょ。 難聴の人、外国映画を、ビデオで見る。字幕、有るからよ。 だから、日本語の吹き替え、役に立たない。そんな物、プレゼント、する人、 居るのよ。　用心してね。 ノートを読んでいると、この先生、マトモなのに、あの時、何んで、あんな 変な説得、したのだろう？　　要するに、悪者に、成りたくない。 最近の学生、この感情が、恐ろしく強い。　絶対、すいません、言わない。 これ、日本人同士では、マイナス。　中国人、韓国人となら、プラスかな？ 日本人同士も、この頃は外国人、みたいなもんだから、プラスかも？ 障害者の側の人、まるで、葵のご紋、持ってるみたいな態度、 無きにしも非ずだよ。　水戸の黄門様でも、あるまいに。 この先生、ワシと同世代、五十代。　これじゃあ、今の若い者は、なんて、 言えんぞな、もし。 　*　　　　　　　*　　　　　　　* うちの大学病院で、以前、聴覚障害の衛生士、採用した事が、有る。 半年、持たなかった。 仲間の衛生士に、スポイルされて、辞めて行った。 理由は何か、と言うと、電話が横で、鳴っている、その衛生士、 知らぬ顔で、立っている。 アルジネート、練ってよ、と言っても、反応が無い。 聴覚障害なんだから、周りの人は、考慮して上げないと、駄目よ。と、 注意されても、上手く、行かない。 人間関係に、躓く（つまずく）。 その子、孤立して、半年で、辞めてしまった。 階段に、スロープをつけて、バリアフリーにするの、簡単である。 人の心の段差、埋めるの、難しい。 ＜　時代は、変わった。　若者は、昔の若者に、あらず　＞ 一年次だ。午後いち、英会話の時間だった。 若者一人、授業の最中、のそっと入室。　もちろん遅刻。 昼飯、まだです。　さっきまで、寝てました。（みんなアハハッ） しばらくしてワシ、後ろを見た。　彼、机にベターッ、寝て居る。 ワシ、思わず笑い出し、おいおい、さっきまで、寝てたんだろ。　起きろ よ、見っとも無い。　するとだ。　この若者、ワシの言葉に腹を立て、 ボクは、ちゃんと自己管理して、計算しながら授業に、出てます。 何で、文句、言われなきゃ、ならんのですか？　失礼なっ！ 彼の反応に、ワシ、呆れた。 昼まで寝てて、午後の授業、遅刻して、あげくに、 授業で、寝ておれば、こりゃ、冷やかされて当然。　と、ワシの 世代は、思う。　今の時代、そうでは無いらしい。 英会話の授業で、も一つ、忘れ難いのは、一人の女の子。 これも遅刻。　前のドア、ガラッと開けて、自分の席まで一直線、 イギリス人の講師の前を、完全に無視して通過、仲間の女の子に ハーイ、して着席。 英国人の講師、何も言わずに、授業、再開。 なんぼの事にも、ワシ、呆気（あっけ）に取られて、しばらく、ポカン と、なった。　無礼？　礼儀知らず？　とに角、魂消た。 授業の後、学生に聞いた。 君ら、あんな事、いつもするの？ 学生、とんでも無い。　あんな恐ろしい事、とても出来ません。 そうだろうなあ。　それにしても、あの英人講師、何も言わなかった。 あれも、気味悪い。　ワシ、あの女の子に、オキャンなる愛称、奉った。 （たてまつった） ＜　トイレの　落書き　＞ トイレの落書き。大学の、知的水準を、示す。 明海大歯学部にも、トイレの落書き、当然有る。 ワシの愛用のトイレ、裏玄関の横。　毎朝登校、あそこで、しゃがむ。 なぜか気分が、和んで（なごんで）来る。 前方に、落書きがある。 みんな、みんな、聞いて！ オレより、百倍、危ねえ女の子にさあー。ゴム付けてよ、病気、怖いから って、言われ、ちまったんだよーっ！ 嫌やに、なっちまうよ、なあー！ さすがに、歯学部だ。　知的水準が、高い。 ワシ、一年間、これ眺めつつ、朝グソ、たれて居た。 横に、追加した者が、居る。 いやあ、セックスって、良いもんですなあー。 これ、中日の監督、のち、オリンピック野球の、監督に成られた、 星野仙一氏の、迷言では、ないか。 明海大の俊英よ、引用は止めろ。　オリジナルで、行け。 次の日、この文から線が、伸ばしてある。 ケント、いい加減にしろ！　バイ、アメフト。 何のこちゃい、よく分らん。（本当は、判っているのだ！） ＜　英会話の授業を、考える　＞ 明海大の英会話、なぜか、イギリス人と、決まってる。 英語担任、帰って来た酔っ払いこと、近藤浩一先生だ。 以前、アメリカは、マサチューセッツ大出身、米人講師が居てね、学生、 余りに勉強せんものだから、（勉強しないから）、授業、途中で放棄して、 教室、出て行っちゃった。　学生、切れた！　切れた！と、大騒ぎ。 ワシ等が一年次のイギリス人、三十代、背は低いが、がっしりした体格、 なかなかの人気者だった。　まあ、同情すべきは、非常勤で、週一回来て、 同じ授業を、四回する、どうしても、セーブした授業とは、成る。 授業、もっぱら、テープを使用。　肉声は、少ない。 同じ授業が四回では、要求する方が、無理かも知れん。　学生の態度、 だんだん劣化して、興味を、示さない。　雑談する。フラーッと教室を出て コーヒー、飲みに行く。　英人講師、悩むでしょうな。 学生これを、明海大歯（は）の、知恵熱と言う。 免疫を獲得するまで、苦しむ。　なるほどね。 一年次のイギリス人、だから、だろうか？　学生を、叩き潰す処が有った。 愛称、カリフォルニア、高校を出て、渡米。　二年間の英語学校。 続いてロスの大学、ちゃんと四年で卒業。　英語、当然ペラペラ。 一年次の英会話、最初の時間。このイギリス人講師と、ネイテブの会話。 当然、ワシら、チンプンカンプン。 この時イギリス人、何をしたか？　と言うと、彼に、ハンデイーを付けた。 厳しく採点すると言い渡し、本当に辛い（ひどい）点を付けた。 お陰でカリフォルニア、ボク英語、判りましえん。に、成ってしまった。 諸君ら、これを、どう思う？　良い事か、悪い事か？ その授業の、一つ。 教科書、小学生レベル、サイコロゲームなど、しなきゃあ、いかん。 五十歳のワシ、キャアーとか、スゴオーイ！　なんて、言わされる。 合わせるのが、辛んどかった。　ネンネ扱い。拷問に、近かった。 *　本　*　西部戦線、異常なし　*　　レマルク著　（第一次大戦の体験記） 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　当時の、世界的ベストセラー にも有るように、背が低くて、がっしりタイプには、気を付けろ。 アイデアが、少ない。　教科書、通り。　命令に従う生き方をする。 このイギリス人講師、次の年、ある大学歯学部の、専任講師に採用された。 これは出世だ。　授業では、学生が何をしようと、絶対、何も言わぬ男。 しかし良いものを、何故か、叩き潰して、しまう所があって ワシ、気に喰わなかった。 二年次のイギリス人講師は、これと、正反対。 細身で背が、目茶高い。身長１９８センチ。　よって脚が、恐ろしく長い。 体形が反対なら、性格も、当然反対。 アイデアマンで、教科書は、参考程度。 内容を自由にアレンジする。 ここまでは良いのだが、学生の無関心、上手く、対応出来なかった。 それが、残念だった。 彼は授業を、止めてしまった。　そして学生を、ひたすら責めた。 君らは何故、授業に関心を示さないのだ？　アイデアが有れば、言って 欲しい。　どうして、勝手な方向に向いて、おしゃべり、してるのだ？ 彼、四十五歳。（ワシこの時、五十一歳）　来日、四年目の春だ。 気持ちは、判る。　日本人の先生も、学生の無関心に、悩むのだ。 このイギリス人の解決法。　あんま、褒められた代物（しろもの）では 無かった。　授業の最初、五つのセンテンスを黒板に書く。 教科書を読みながら、突然、五つのセンテンス、言える人！ 教室の全員、手を挙げて、はいっはいっはいっ！ 指名された学生、ノート見て、五つのセンテンス、読む。 ＯＫ！　君、帰ってよし。　 学生、してやったりの顔してカバン持ち、意気揚々と教室を出る。 授業開始、十五分だ。　三十分で、教室は空。　授業お仕舞い。 幾ら何んでも、あんましや、思いませんか？ 教室は一見すると、活気に溢れてる様だけど、病的と違いますか？ ワシ、手を挙げなかった。　当然、教室は、ワシ一人に成った。 ワシ、イギリス人と差しで、談判したんよ。　あんましやないか、 言うてね。 あんたには、日本の学生、アホに見えるやろ。無理は無い。 しかし、これじゃあ学生、子犬扱いじゃ無いですか？ 日本の学生も、良くない。　これじゃ、黄色いサルだ。 明海大歯学部の学生よ、日本の名誉の為だ。　少しは真面目に、やれ！ あれはワシの、四年次だった。　夕方四時。　自転車で、帰宅。 東武東上線、川角駅の近く、スタスタと、前を歩いて行くのは、 そのイギリス人や、ないけ。　四時限目は三時から、四時半だぜ。 四時に、ここを歩くには、三時半に授業、切り上げねば、ならん。 と、思いながら、自転車をこぐワシも、やっぱ、同じ時間だ。　教授が 授業、お仕舞いに、したからだ。 これじゃあ、イギリス人を責める資格、誰にも無いぜ。 こんなんで歯医者に、成れるんだから、歯科医師なんて、ちょろいもん だよ。　その後、このイギリス人、どこかへ行って仕舞った。 　*　　　　*　　　　* 彼とした対話で、面白いのを、一つ。 君は、何処で生まれたのか？　と聞くから、飛行場の有る、石川県小松だ、 と言うと、どんな飛行機、飛んでるのか？　と聞く。 ワシが、ファントム、Ｆ１０４，イーグルと並べると、そりゃあ、アメリ カの飛行機じゃないか！　と驚く。　日本の飛行機は、無いのか？ 日本は、飛行機、作れないのだ。　と言うと、ますます、いぶかり、何を 言う、君らは、ゼロ戦を作ったじゃないか！　と大声だ。 いや、作ることは出来るんだが、アメリカが、作らさんのだ。 民間機の、ＹＳ１１も、アメリカが、潰した。 コンピューターのＯＳだって、ウインドウズより、東大の坂村教授のトロン の方が、ダントツ良かったのに、アメリカが、潰した。 とも言うと、 なぜ、潰される？　なぜ、君らは抵抗せんのだ？　日本は、まだ占領 状態なのか？　と、大変な剣幕だった。 この辺になると、ワシの英語では、意味が通じ無い。　カリフォルニアに 通訳させようとすると、去年、よほど懲りたらしく、逃げてしまった。 そんな訳でこの会話、意味不鮮明に終わったのは、返す返す、残念だった。 この本の中で、愛称で出る人、大学時代、一応、了解を取ってある。 カリフォルニアに、了解を求めた時、彼、どうせなら、 カリフォルニアの輝く太陽男に、して来れませんか？　なんて言うから、 そう言う贅沢は、認められないと、断った位だ。 カリフォルニアの輝く太陽男だなんて、そんな愛称は、頭が禿げるぞ！ 彼の父、開業産科医。　病院の経営が、成立するには、月、最低十名の 出産が、必要だそうだ。 昔は月、六十名を越えた事さえ有ったのに、今や、十名がやっと。 お兄さん医学部なれど、臨床より、遺伝子の研究が好きで、親不幸しとる。 カリフォルニア、ウチの病院も、オヤジの代で、お仕舞いかな？ なんて、寂しい事を言う。 我が二十九期には、親が産婦人科の学生、もう一人居て、そっちの方は、既に 廃業。なんでも病院兼用の自宅、四階にはホールが有って、グランドピアノが 置いてあり、お母さんが、時々、鳴らしていたそうだ。 得意は、ショパン。　リクエストが有ると、モーツアルトも弾いたそうだ。 彼、男前。　お母さん、美人に相違ない。 我が歯学部、良い男が多いのは、お父さん、お金持ちだから綺麗なおなご 嫁に貰うから。　よって息子、男前。　お父さん、大抵不男なんで、娘、 がちゃ子で、苦労する。　日本の金持ちなんて、たかだか、一代か二代に 過ぎぬ。　どうしても不男が、美人を娶る事に、成りがち。 この為、二十九期も、良い男が多かった。　 *　　　　　*　　　　　* ここで、お断りを一つ。　愛称、了解を取ってない方も、居られる。 文句、覚悟してます。　ハイッ！ さて、次の段では、序曲、嵐の予感パート２、を書く。 その他、話題には、事欠かぬ。

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