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 人生に免疫力無き方、読む事なりまッせん

第 3 章 * 10 / 12
明海大歯学部・問題教授列伝
< 天野修教授と中島敏明先生 >



このページでは解剖学、
時岡孝夫教授・天野修教授、
中島敏明先生などを語る。




*     *     *




<中島敏明先生は自発的に退職され、後進に席を譲るべきである>



解剖学、故時岡孝夫教授に付きては、表本(おもてほん)に多く
書いた。

現在の教授たる天野修教授は、大学の廊下にて、お姿を拝した位。
我ら29期は講義を受けて居ない。

よって評価の対象外とす。



時岡孝夫教授が退職された後の、天野修教授の解剖学の構成人員な
ど拝見すると、

天野修教授の、講座経営の姿勢が伺(うかがえ)て興味深し。
前任の時岡孝夫教授は、解剖手技の名手だった。



ワシ、時岡教授の傍に居て、その解剖の一部始終を注視しとったから
時岡教授の解剖が、如何に素晴らしいかを、

語り伝える資格有りと言える。 教授に人体解剖各位の解説をさせ
ると、これ又、実に実に医学の真髄に触れるが如き、

学識の甚深さに、ワシら舌を巻いたものだ。



だけど時岡孝夫教授、講座経営の面では平均点以下だ。 教授は
一見すると、あたかも餓鬼大将を、そのまま大人にしたかの如き、

利(き)かん気の人物に見えるのだが、実際の教授は、さに有らず。
ワシらが見ておる、その眼前で、だぞ。



講座のスタッフの先生が時岡教授を、糞みそに貶(けなす)のだ。
あの光景には呆(あき)れてしまった。

教授を人前にて貶(けな)した先生の名を、藤井博子先生と申す。
胸郭が男勝りに厚い、頑丈な女子(おなご)だった。



だけども、ワシらが見とる前で、あれ程まで頭ごなしに、教授に文句
言う姿、どう見ても品が良くない。

時岡教授、さながら叱られとるが如きで、あれでは教授の地位その
ものまで、如何かと思わざるを得ぬ。

ワシは唖然として、その様を眺めとった記憶ある。



   *       *       *



その後で時岡孝夫教授、ワシに言うのよ。 あの女を学外へ出したろ
かと思とるのだがと。

ワシ、言うたった。 先生は、ここへ来られて十年目です。 出すの
なら何故(なぜ)もっと早く出さなかったのですか。



先生は後(あと)二年で定年です。 今頃そんな事言うのは手遅れ
です。 腹は立つでしょうが、ま、あと二年です。

放っとくより仕様(しょう)が無いです。 先生は教授です。
あっちは助手です。 先生の勝ちですから。



あと二年、我慢しましょと、ワシ、時岡教授に言うた事。 表本に
書いた通りだ。

その時岡教授を、面前にて叱責するよな藤井博子先生は、中村尚子
先生と共に、天野修教授の手にて学外の人とは成った。

当然の処置である。



ワシの表本のその箇所を読まれたし。 彼女らのレベル、大学の
解剖学のレベルに達しておらぬ。

学生に対する反応にも問題が有る。 天野修教授の処置、本来は
時岡孝夫教授がすべき事であったのだ。



**************************************************************



さて序(ついで)に、この節のタイトルに言及す。 ワシは中島敏明
助教授に遺恨など無い。

んだけどもここに、中島敏明助教授の自発的退職を求めるのである。
その理由と根拠を以下に示す。




( 理由の 1 )


かってドカベンが、日大歯学部にて本学(明海大歯学部)を乗っ取る
のじゃ無いかと心配して、

ワシにそれを言うた先生が有った。 これしかし我が明海大歯学部
全体の乗っ取りと言うべし。



このドカベンに比べると、中島敏明先生の乗っ取りは規模が小さい。
中島先生のは歯学部の中の、解剖学講座の、

自分と同じ大学の出身者による、占領である。 ただし教授は取れ
ないから、教授以下のスタッフの先生の独占だ。



我ら29期の二年次、先生から講義と解剖実習を受けた頃。 助教授
がくだんの中島敏明先生。 

助手に杉山完司先生と、おふた方の同学出身者が居られた。 その後
採用を狙い、同学出身とおぼしき若い方が研究室に居たが、



天野修教授、この若者を採用せず、学外へ去らせた。 時岡孝夫教授
なら採用してただろ。

その理由は、時岡教授は講座の経営が下手糞だからである。 その点
で弱味が有った。



どうしても中島敏明助教授の力を借りぬ事には解剖実習でさえ、運営
しかねた。

その弱味が、中島先生の同学出身者の講座壟断(ろうだん)を招い
たのである。



だから中島敏明先生としては時岡教授の時代に、強引でも良いから、
あの若者を採用しとくべきだった。

そうしときゃ中島先生同学のお仲間が、解剖学講座に、お三名様と
成りて、実質解剖学講座は中島敏明先生の占領だったでしょうに。

押しのタイミングが、ちょっと悪かった。



   *       *       *



時岡孝夫教授の、もひとつアカンのは、歯学部の卒業生を解剖学講座
へ集められない事だ。

解剖学も、やり方次第では、歯科医学の最先端の分野とは成る。
東京歯科大の解剖学教室を見よ。



これをする為には中島敏明先生みたい、私立大学の生物学履修者では
付いて来れない。

歯科医学履修者と生物学履修者では、感覚が違い過ぎる。 中島先生
の解剖は、一般生物学の解剖である。



   *       *       *



ワシ在学中、時岡教授に言われて、三年次の夏休み、学生の解剖実習
に駆り出された。

この時ワシ、インプラントに関した、ある種の知見を得たく、その
目的に絞った解剖の許可を、教授から得ていたのだ。



中島敏明助教授に、その旨(むね)を申し出ると、中島先生、あらか
さまに不快を示され、駄目です。

解剖実習の手順通りに進めて下さい。 勝手な解剖は許しません。




ワシ、そう言う反応が来るのじゃないかと予感しとったが、やっぱ
その通りに成った。

ああやっぱ、一般生物学の出身者では、あかんなあと嘆息した
ものだ。



下顎骨ひとつ手にしても、一般生物学の人間と歯科医師では、興味の
置き所、ぜんぜん別である。

だから歯学部の解剖学講座のスタッフの先生方は、歯学部出身者が
望ましい。 感覚が違うからだ。



出来得(う)れば、口腔外科学、歯周病学、歯科矯正学などの専攻者
が望ましい。 他講座の専攻者でも構わぬが、

とにかく歯科医師の臨床した先生が解剖学へ来て欲しいのだ。 一回
でも抜歯すれば、骨に対する感覚、

一般生物学者と別世界に成る。



中島敏明先生は、この点で失格なのである。



   *       *       *



< 理由その 2 >


在学中、ワシは知らんかった。 解剖学の、あの中島敏明助教授が、
大金持ちだなんて夢にも思わなかった。 

卒業した次の年である。 ある先生に誘われて車にて、中島先生の
ご自宅を見学に行った。



国道254号線である。 東京池袋から北上して川越の街を通過し、
我が大学の所在する坂戸市の東隣りに在る

川島町に差し掛かる辺りだ。



川島町の町並みを左手に見ながら、同じ側の巨大なショッピング
モール。 その名をベイシアと言えば、

それだけで大きさが想像出来るだろ。 ただし関東の方のみでは
あるが。 お隣は例に依りてカインズホームだ。

これまた広大な店舗と駐車場。



両店の駐車場スペースを合わせると広いの一語に尽きる。 地平線が
見えるほどに。

中島敏明先生のご自宅は、そのショッピングモールから入って、すぐ
の所だ。




これが先生の家だと言われて見ると、こりゃ家じゃ無い、豪邸だ。
スゲェ〜ッ

の一語であった。




あの中島先生が、こんなお館(やかた)に住まわれてたなんて、考え
もしなかった。 ワシ、率直に魂消た。

車窓から見ると、広い植木の前庭(ぜんてい)に、年配のお婆さんが
座って御座った。



ワシ、それ見て、何と無く笑ってしまった。 と言うのも、そのお婆
さん。 豪邸から浮き上がりて場違いに見えたから。

運転の先生と顔を見合わせて苦笑してしまった。 ありゃあ恐らく、
中島先生んとこの田んぼが、ショッピングモールに

掛かったのでしょ。



地代が毎月、ドバ〜ッと入るのでしょ。 我らの推定では月、低く
見積もりても、200万。

ひょっとすれば、それ以上だ。 ワシには経験が有る。 ワシの故郷
の石川県小松市だ。



昔の国道8号線。 今の305号線。 そこへオートバックスの店が
開店した。 オートバックスならご存知だろ。

広さは1000坪。 田んぼが三枚。 三反(さんたん)ちょっと
である。 ワシは古い人間なんで、ヘクタールで言われても、



ピンと来ない。 田んぼ一枚は、一反である。 300坪だ。 その
三反の田んぼを貸した奴が、ワシの工場の近所に居(お)ってな。

そこの兄さん、それで仕事、止めちゃった。 朝の十時頃、ワシが
トラックに品物積みて通り掛かると、



仕事してないお兄さん、お車の洗車中だあ。 ワシに背中向けて、
ニタニタしてるのが判る。

ニャロメ〜ッと思いつつ、トラックを走らせとったものだ。 オート
バックスからの地代は、月120万だそうだ。



毎月120万、貰(もらえ)りゃあ、ワシも仕事止めるぞ。 中島
敏明先生の豪邸を眺めると、

こりゃあ毎月 200万は堅いなと、ワシ、思ったのさ。



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だからこの文を書く。 中島敏明先生よ。 そんな大収入が遊んで
て入るご身分なれば、

自発的に明海大歯学部を退職なされ、貧乏な後進に道を譲られては
如何(いかが)か。



解剖の仕事を続けたいなら非常勤にて、同じ職場に勤務されよ。
ワシ、それを先生に強く求める。

さらに、この次に述べる理由からも、先生は退職すべきだと、ワシは
申す。



   *       *       *



< 中島敏明先生は講義が、完璧にあかん >



明海大歯学部の六年間。 先輩や同期生から、あの先生の講義は駄目
だと聞いた先生が、おふた方、御座った。

この中島敏明先生が最初で、二人目は今は退職された 谷勅行先生だ。
谷先生は退職して大阪に帰られたので、これは置く。



二年次の最初だった。 解剖学の講義である。 中島敏明先生の、
文字通り無意味に近い講義に、ワシは参った。

器官や部位の名前を羅列するのみ。 ある時は、講義の最初から
最後まで、一語も発っせず、



ひたすら黒板に字を書く。 問題は板書(ばんしょ)する、その内容
なのだ。 教科書(分担解剖学)の目次なんである。

その目次を黒板に、90分間、ただただ、ひたすらに書く。 終業の
ベルが鳴ると、こっちを向きて、

本日はこれにてお仕舞いと申されて退室された。



さすがにワシ、横の学生と顔、見合わせて、何じゃいあれはと言わ
ざるを得なかった。

大学の図書館の蔵書を見ると、貸し出し名に中島敏明先生と有る本が
少なくない。



おおッ先生、結構勉強されとるなと感ずるのだが、先生の講義を聞い
ても、その成果、さっぱ反映しとらん。

講義を聴く限り、この先生、少し足りぬのではないかとさえ思って
しまう。



中島敏明先生は愛すべき先生ではあるし、解剖実習ではお世話に成り
ましたが、客観的評価では、

こう言わざるを得ぬ。



   *       *       *



こんな先生を助教授にした教授にも責任が有る。 よってワシ、
中島敏明先生の自主的退職を勧告する。

先生が貧乏人なら、また別の言い方が有る。 しかしあんな億万長者
の不労所得が ドバ〜ッ の方なら、



採用を待つ貧乏人に席を譲るべきである。 以上だ。 中島敏明先生
よ、文句有れば反論されたし。



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以下はワシの独断と偏見の、教授通信簿である。 評価は、
優秀・優良・優・良上・良 の五段階である。



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○ 学生への講義のレベル ○


○ 時岡孝夫教授 ・ 優秀(なかなか面白い)
○ 天野 修教授 ・ 講義、受けた事なし。


○ 弟子育成能力 ○


○ 時岡孝夫教授 ・ 良下 (スタッフの先生に面罵され)
○ 天野 修教授 ・ 優良とワシには見えるが。


○ 臨床技能的能力 ○


○ 時岡孝夫教授 ・ 優秀
○ 天野 修教授 ・ 拝見した事なし。


○ 研究者としてのレベル ○


○ 時岡孝夫教授 ・ ご本人はノーベル賞級とワシに言うた。v ○ 天野 修教授 ・ 不明(つまびらかとせず)



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< 寸評 >



天野修教授は、東北大学歯学部卒である。 石川県の金沢大学医学部
の解剖学教室にて助教授をされとった。

そこから我が明海大歯学部へ来られた。 我が歯学部の解剖を、東歯
(トーシ:東京歯科大)に負けぬものに、して頂きたし。



時岡孝夫教授の解剖の手技は、名人級であると、ワシは保証す。
んだけど教授は、

講座の経営には難が多かった。 スタッフの女の先生に、目の前にて
ぼろくそに貶(けな)されたりして、



見てて、ハレハレだった。 良くもまあ、あんな無礼が許される
ものだと、ワシ、呆(あき)れた。

教授は既に、この世の人で無い。 ご冥福を、ひたすらに祈るのみ。
 恐々謹言。










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